二つの憲法

『二つの憲法』(井上ひさし著、岩波ブックレット)を読みました。

井上さんは昨年亡くなった作家です。2004年6月10日にスタートした「九条の会」の呼びかけ人でもありました。

この本は、井上さんが、1999年8月に行なった講座がもとになっています。「日米防衛協力のための指針」を円滑運用するための周辺事態法など、この「指針」関連法が成立させられた直後でした。

「イギリス名誉革命(1688年)直後の権利章典(1689年)から始まって、アメリカ独立宣言(1776年)やアメリカ合衆国憲法(1788年)を経て、フランス人権宣言(1789年)に至る百年間に形成された憲法という『宝物』のような容器に、今世紀の人類が血を流し多大の犠牲を払いながら創り上げた、国際連盟(1920年)や不戦条約(1928年)などに見られる、人間には平和を求める権利があるのだという思想が、新しい憲法に盛り込まれることになりました」(55㌻)。

この過程で、大日本帝国憲法(1889[明治22]年発布)があり、「新しい憲法」=日本国憲法があるのです。

井上さんの感性で、日本国憲法の生い立ちを明確にしようとした試みです。