寅さん/山田監督

「映画で心休めませんか」の言葉に誘われました。

第1部が寅さんシリーズ第15作の「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」。1975年8月封切り作品で、あれこれあった末に、雨の降る柴又駅へ寅が迎えに行き、リリー(浅丘ルリ子)と相合い傘で帰るシーンが「シリーズ屈指の名場面」。

私はたぶん、高校卒業後の21作目からは欠かさず観ていたシリーズ映画で、なにかやっぱり、あのドンチャン騒ぎに懐かしさをおぼえます。

映画のあとは、いわき市内の津波被災地を視察してきた山田洋次監督のトーク。「寅さん映画を作りつづけて」といったテーマでしたが、「観客のものになっている作品」だけに、科学技術がどんどん進歩する世の中で、進歩しようともしない寅をスクリーンにどう映し出すかは、山田さんの楽しみでもあったように思います。

会場のすぐ向かいが、高校同期の開業医。上映前によって、3・11からの様子を聞きました。

福島原発の真実

『福島原発の真実』(佐藤栄佐久著、平凡社新書)を読みました。

「東電というよりも経産省、そして日本の統治機構そのものが抱える問題が、今回の事故の縦糸であり、また横糸でもある」と言い、「『必要だから、正しい。安全だ』という日本社会の至るところにある嘘と欺瞞は、こうしてメルトダウンしたのだ」という実感が、本書全体を貫いています。

福島県知事現職時、「(19)89年の福島第二原発のポンプ部品脱落事故をきっかけに…福島県は、専門の部署を強化し、自ら情報収集、分析できる力を身につけてきた。02年の点検結果、改竄・トラブル隠し発覚の際には間違いのない調査能力、分析力を発揮するまでになった」とは著者の自負であり、事実だと思います。

現在の佐藤雄平知事になってから、09年7月に4年ぶりに再会された福島県エネルギー政策検討会は、「県職員が県民の立場に立って自ら問題意識を持ち、考えようという意識は影を潜め、政府の原発政策を追認する会合に変容していた」。

02年の不正事件発覚時には、「原発の経済的利益を追いがちな県議会も、県と共闘するようにな」り、「本県においてはプルサーマル計画は実施しないこと」とする意見書まで採択したのに、現知事がプルサーマルに同意するや、「この意見書採択は『なかったこと』にしてしまった。議会という権威と、県民を守るとりでの役割を、自らかなぐり捨てた」と断罪しています。

著者が言う「県議会」の姿勢には、もちろん、共産党県議団はくみしていません。