馬・船・常民

網野善彦・森浩一著『馬・船・常民』(講談社学術文庫)を読みました。中世史と考古学のそれぞれ専門家の対談です。対談したのは1991年、最初に本が発行されたのは翌92年、文庫化は1999年。

網野氏は、森氏と親しく対話するようになってからは、「畿内中心、水田中心のものの見方、海の役割の軽視が、いかに日本社会像を歪めてきたかについて痛感し始めていた私にとって、森氏の発言は強力な支えであった」と言っています。

対談は20時間に渡るものでしたが、さすがに地名や歴史上の人名などが次つぎと出てくると、ほとんど着いてはいけませんが、そこは割り切って読み飛ばし。網野さんは対談の最後に、「ここででてきた問題についても、まだわからないことだらけだというのが現実」「地域の独自な歴史を総合的にとらえるために、文献史学と考古学、民俗学も含めて、まだまだやるべきことがたくさんある」と。

網野さんの後進のかたがたがとりくんでいるものと思います。

本書の目次 Ⅰ 馬の活躍と人間の争い(一 東国の騎馬軍団 二 東国の渡来人と馬文化 三 東と西、馬と船 四 隼人と馬 五 犠牲獣と馬 六 豪族・武士団の地域性 七 楠木正成の背景 八 弥生の高地性集落と中世の城 九 海に向かう城)

Ⅱ 海からの交流(一 北陸・能登 二 港を押さえた豪族・寺社 三 商業活動と信仰 四 隠岐と佐渡 五 吉野ケ里遺跡と神崎荘 六 出雲と越 七 海村の都市的性格 八 瀬戸内海・伊予 九 太平洋の動き 十 スケールの大きい海の交流)

Ⅲ 歴史の原像(一 鋳物と塩の交流 二 隠された女性の活躍 三 名前と系図 四 天皇と「日本」)