「いつでも元気」「comcom」の5月号と「経済」6月号

雨のきょうはまず、全日本民医連の『いつでも元気』、医療福祉生協の『comcom(コムコム)』のそれぞれの5月号の特集「子どもの貧困」、「子どもの居場所 おとなの居場所」を読みました。160517「元気」「コムコム」「元気」には長野、京都の民医連医療機関のとりくみ、名古屋市内と練馬区内での「無料塾」「こども食堂」が紹介され、「コムコム」ではNPO法人の赤石千衣子さんのインタビュー、名古屋市内と大田区内の「こども食堂」が紹介されています。160517「元気」貧困発見ポイント京都・かどの三条こども診療所の「貧困を発見するポイント」は医療機関に限らず、参考になると思います。

午後には、おとといからぼちぼちと読み進めていた月刊誌『経済』6月号を興味深く読みました。160517「経済」6月なかでも特集「アベノミクス 破綻と転換」の藤田宏さん「貧困クライシス」では、5つの図、8つの表を使い、「危機」と同時に「転機」「重大局面」の意味を持つクライシスの現実を浮き上がらせ、安倍政権打倒の世論と共同をさらに発展させ、ピンチをチャンスに変える、「働く貧困」打開の政策提起を訴えています。160517「経済」6月2・増大貧困

論文では「働く貧困」層を、“結婚の壁”、老後の年金水準から年収300万円未満としています。2番目の表では、1997年から2012年にかけて「働く貧困」層が580.5万人も増大し、非正規労働者の9割近く(89.1%)になっているだけでなく、正規労働者の3割近く(28.8%)になっており、雇用者に占める割合は過半数を超える55.1%という驚くべき高さになっていることが示されます。160517足踏み

福島原発事故と小児甲状腺がん

『福島原発事故と小児甲状腺がん』(宗川吉汪[そうかわ・よしひろ]・大倉弘之・尾崎望[のぞむ]著、本の泉社)を読みました。ブックレット仕様です。160515甲状腺がん「はじめに」の冒頭で「本書の主張は単純明快です。福島の小児甲状腺がんの多発の原因は原発事故でした。福島県が2015年8月31日に発表した第20回県民健康調査のデータを統計学的に解析した結果、上の結論を得ました」と。160515小児がん目次1章が本書主張を論証するメイン、2章がその統計学的分析、3章が臨床医としてとりくんでいる避難者健診、1・2章を受けての提言です。160515甲状腺がん5㌻

まず、県の発表結果の発見率から単純に患者数を推定し、次に先行検査・本格検査での平均観察年数(先行=9.5年、本格=2.975年)を加味して10万人当たり1年間の患者発生数を推定(先行=9.5人/年、本格=54.7人/年)し、さらに受診対象者に対する実際の受診者の割合である受診率を考慮して、統計学的に以上の推定値がどの程度の誤差の範囲にあるかを導いています。160515甲状腺がん38㌻結果、先行と本格の発生頻度の比は11.7:35.4。そして、原発事故後に発症した子どもの甲状腺がんの67%以上は原発事故によると推定しています。

県側が原発事故の影響を否定する論拠とした「チェルノブイリ後の事実」とは異なる事実が報告されている、「先例となる被災国の知見をゆがめて伝えることで、教訓を生かせなくなる」(尾松亮氏、「朝日新聞」福島版4月18日)との指摘もあり、地域別・年齢別・性別の影響の違いなどを含めてより詳細な分析結果を県側が示すとともに、経済的な不安なしで継続的な健診を東電と国の責任で実施することは不可欠です。

田園回帰がひらく未来

『田園回帰がひらく未来』(小田切徳美ほか著、岩波ブックレット)を読みました。副題に「農山村再生の最前線」とあります。田園回帰全国町村会と一般社団法人・地域活性化センター主催の連続企画「都市・農村共生社会創造リレーシンポジウム」が昨年(2015年)5月から行なわれ、本書は東京会場の第3回(11月17日)の記録です。田園回帰目次テーマは「田園回帰と日本の未来」。第一部では3人が基調スピーチ、第2部ではパネルディスカッション「田園回帰のススメ-共生と循環の扉を開く」。

パネルディスカッションでは3人の田園回帰実践者の報告、コメンテーター、コーディネーターのの発言が収められています。

「消滅可能性都市」を打ち出した一昨年のいわゆる「増田レポート」にはまったく見えていない最前線の田園回帰の波がくっきりと見えるようです。

全体としてこうした田園回帰の現実が多面的に-背景、本質、諸相、戦略の視点から-論じられています。

以下の本も参考になります。『農山村は消滅しない』(小田切徳美著、岩波新書)『地域に希望あり』(大江正章著、岩波新書)『地方消滅の罠』(山下祐介著、ちくま新書)『「自治体消滅」論を超えて』(岡田知弘著、自治体研究社)『地方消滅論・地方創生政策を問う』(岡田知弘・榊原秀訓・永山利和編著、自治体研究社)。いずれも「自治体消滅論」が成り立たないことを示してくれていると思います。

翔子の書-「愛の物語」/伊藤若冲/牡丹の開花

「雨読」の日。『愛の物語』(金澤翔子・書、金澤泰子・文、新日本出版社)、『若冲への招待』(朝日新聞出版)を読みました。160511翔子・愛の物語

『愛の物語』は、昨年、30歳となったダウン症の書家・金澤翔子さんの24点の作品とお母さん・泰子さんの文章。『女性のひろば』(共産党発行の月刊誌)連載の「翔子の書」2013年12月号~15年11月号に掲載されたものです。160511翔子・愛の物語目次昨年3月、国連本部での「世界ダウン症の日」スピーチ原稿、インタビューも収載されています!若冲招待伊藤若冲(じゃくちゅう、1716~1800年)は江戸時代中期の絵師。彼が生まれた年に吉宗が8代将軍就任。大英博物館設立(1753年)、「解体新書」刊行(1774年)、アメリカ十三州独立宣言(1776年)などがあった時代です。若冲招待22㌻

若冲の絵について美術史家で東大・多摩美大名誉教授の辻惟雄(のぶお)さんは「堅実な商家育ちの無粋なまでの『生真面目さ』。一途な『孤独癖』。それでも湧き出る『ユーモアと遊び心』、それに『信仰心』が加わって渾然一体となっている画風」と言っています。

ちなみに、故加藤周一さんは、彼の技法について、①様式化②大小③斑点(dots)を多用する描法④色面の強調⑤構図の5点を「感想の一端」として「夕陽妄語」(2000年11月22日「朝日新聞」夕刊、「加藤周一自選集」10巻所収)に書いていました。160511朝・牡丹そういえばけさ、8日前に須賀川市の牡丹園で買った、固いつぼみだった花が開き始めました。

「昭和天皇実録」

『「昭和天皇実録」講義』(古川隆久・森暢平・茶谷誠一編、吉川弘文館)を読みました。昭和天皇実録

編著者によれば、本書は『歴史研究者が読む「昭和天皇実録」』とでも名づけられるもので、その目的は、「『実録』の記述をどう読み解くべきかの視点を、研究者の立場から広く内外の人々にわかりやすく提供し、さらにはそうした作業を踏まえて『実録』の意義と問題点を具体的に示すこと」です。

200ページちょっとの手ごろな分量でもあるし、「昭和」のほぼ半分の後半30年を生きた者として、読んでおいたほうがいいかなぁ、と思って手にした次第です。昭和天皇実録カバー裏

「実録」そのものは、1990年から国の事業として宮内庁で編修作業が始まり、16年で出来上がる計画がけっきょく24年かかり、2014年8月、和綴じの61巻(うち1巻は目次・凡例)、1万2,137ページとして完成し、同年9月9日に公表されたものです。昭和天皇実録オビ裏

本書は、その実録を史料批判の対象の一つとして丹念に読み込み、裏づけをとりながら事実を一つ一つ解明する歴史学の常道に基づき編まれています。

新史料や新事実の記載、これまでの学説や諸資料の批判材料としての利用価値も当然に期待されたこの「実録」を、ほかの歴史史料や研究書と比較させながら詳細に解読し、一般向けに書かれているだけに、読みやすいです。

18歳からの民主主義

『18歳からの民主主義』(岩波新書編集部編)を読みました。民主主義18歳

各執筆者が、今年の参院選から投票するであろう18,19歳の有権者に語りかける口調で書かれています。

三部構成で、「Ⅰ 民主主義のキホン」では6人の学者、ジャーナリストがそもそも論を語ってくれます。

「Ⅱ 選挙。ここがポイント!」でも、10人の各分野の達人が、具体的に何を判断のよりどころにすればよいかの簡潔なヒントを示します。

「Ⅲ 立ちあがる民主主義!」では、18歳から101歳まで、世代も、立場も、職業も違う多彩な人たち19人が、民主主義について思うところを縦横に記してくれています。民主主義18歳カバー

税金の集め方・使い方の現実と民主主義的ルール確立のためのヒントが弱い気がしますが、あくまでも考えるためのヒントなので、契機になればと思います。

いずれにせよ、若者を読者の対象としていますが、全有権者にとって間違いなく参考になる本だと思います。

電力自由化/誰の何のための自由化か考える

『電力自由化で何が変わるか』(小澤祥司著、岩波ブックレット)を読みました。160507電力自由化

先月(2016年4月)から“電力会社を選べる時代”が到来し、消費者にとって選択肢が広がる、電気代が安くなる、経済活性化につながる、などと一見いいことずくめのように聞かされます。160597電力自由化目次数多くの小売事業者が参入もしているようです。電力会社を自由に選べるのようになるとはどういうことなのか、どう対応したらいいのか、何もしないでいたらどうなるのか…160507電力自由化裏表紙自由化の内容や過程を検証し、原子力発電や再生可能エネルギーはどうなるのか、誰の何のための自由化なのか、国民にとってより良い電力・エネルギー制度とは何か、どのようにエネルギーを使っていくべきか、電力自由化をめぐる疑問・課題に答え、いっしょに考える書です。

再生可能エネルギー100%/日本でも具体的な展望

『再生可能エネルギー100%時代の到来』(和田武著、あけび書房)を読みました。再エネ100%

こういうものを読むにつけ、国民の意思とは無関係に、「原発重視・再生可能エネルギー抑制政策復活の動き」(96㌻~)を加速・強行する安倍政権の時代逆行の姿勢が浮き彫りです。

本書では、著者自身が現地での調査・研究を続けるデンマーク、ドイツでの具体的な事例も紹介されています。私も4年前、福島県議会視察団の一員としてドイツを訪れた際、バーデン・ヴュルデンベルク州政府大気環境エネルギー省、フライブルグ市環境保全局カールスルーエ市(人口約28万人)、ブライトナウ村(人口約2,000人)での各担当者・首長らの積極的な姿勢に心打たれたものです。再エネ100%まえがき

再生可能エネルギーは脱原発・地球温暖化防止・平和維持にとって不可欠であることがまず強調され、世界のエネルギー動向として、再生可能エネルギー100%へ向かう転換が趨勢になりつつあることが示されます。再エネ100%世界

同時に、多様な再生可能エネルギー資源が豊富に存在し、それを活用する技術力も高く、現に「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」が再生可能エネルギー普及によって「日本はとくに波及効果が大きい国」と予測し、国内でも原発の再稼働はやめ、電源構成での原発比率を下げ、再生可能エネルギー比率を上げることを望む世論が多数なのが現実です。再エネ100%日本

だから、再生可能エネルギーの適正な普及政策を採用し、市民・地域主導で地域社会の発展に結びつく普及方式をとることで、日本において飛躍的な普及が可能な未来が具体的に展望できることが示されます。

憲法カフェ

『憲法カフェへようこそ』(あすわか著、かもがわ出版)を読みました。憲法カフェ

もとはといえばけさ、NHKスペシャル「天才絵師『若冲』の謎」を再放送していて、若冲関連の本をどうしても見たくなって本屋さんへ行ったところ、この本を目にしてしまいました。

きのう(5月3日の憲法記念日)の「朝日新聞」で、根本清樹・論説主幹が「座標軸」で冒頭から紹介していた本です。160503朝日2

著者の「あすわか」とは、「明日(あす)の自由を守る若(わか)手弁護士の会」の略です。

2012年4月に自民党の日本国憲法改正草案が発表され、同年12月の衆議院選挙で第二次安倍政権が誕生し、草案のような憲法に変えられてしまうと実感し、2013年1月にその危機感を抱いた28人の若手弁護士らが呼びかけて設立されたのが「あすわか」。憲法カフェカバー写真

その年4月ごろから、カフェなどで始まった憲法勉強会が「憲法カフェ」です。カフェに限らず、お茶の間、居酒屋、レストラン、病院、保育所、学校など身近な場所で行なっているんだそうです。

憲法を変える・変えない以前に、憲法が何のためにあり、どんな役割・機能があり、いまある法律とどんな関係があるかなど、憲法のイロハのイを市民とともに知る「知憲」の活動です。憲法カフェオビ目次

そんなわけで、ものすごくカジュアルです。

ここまで進んだ! 格差と貧困

『ここまで進んだ! 格差と貧困』(唐鎌直義ほか9人著、新日本出版社)を読みました。格差と貧困

目次にあるように、若者の住宅問題、孤立の中で生かされる若者の貧困、増え続ける貧困高齢者、貧困の一側面としての子どもの貧困の深刻化、若い女性の不安定と貧困、生活保護の状況と、安倍政権が生み出し続ける日本の独特な貧困の実態が明らかにされます。格差と貧困カバー裏

まさに「驚愕の実態」です。

「今日の格差と貧困について、これほどまでに多角的に論じた本は他にない」(「まえがき」)のではないでしょうか。格差と貧困オビ裏

本書は、共産党発行の月刊雑誌『前衛』2015年7月号から16年2月号にかけて連載された「シリーズ 格差と貧困はどうすすんだか」の10人の著者による論稿をまとめたものです。