『「自治体消滅」論を超えて』(岡田知弘著、自治体研究社)を読みました。
昨年10月に「人口減少時代の地方自治」と題した講演(京都自治体問題研究所・第1回府民公開講座)をもとにまとめられたブックレットです。
昨年9月、安倍首相は、石破茂前幹事長を初の地方創生担当大臣に据えた際、石破氏に対し、道州制や地方分権改革の検討、国家戦略特別区制度の推進を指示しました。 昨年総選挙の自民党「政権公約二〇一四」には、「道州制の導入へ向けて、国民的合意を得ながら進めてまいります。導入までの間には、地方創生の視点に立ち、国、都道府県、市町村の役割分担を整理し、住民に一番身近な基礎自治体(市町村)の機能強化を図ります」とあります。
安倍政権によるこの「地方創生」について、今年のいっせい地方選対策としてのみ見る向きもなきにしもあらずですが、実はそれだけではないどころか、財界が求める「グローバル国家」の形をつくるための長期戦略の一環に位置づけられている、と言えます。
国家戦略特区、TPP(環太平洋経済連携協定)、道州制を相互に連動させている関係のなかでの「地方創生」です。 その方向と内容は「地方自治の蹂躙」にほかなりませんが、その大がかりな地方改造の露払い役として登場したのが「増田レポート」でした。
ともかく、いま、日本が進むべき道は、安倍政権が言う「地方創生」や、その前提となる「増田レポート」のなかにはありません。 高齢化がすすみ、災害が頻発している国土において必要なのは、誰もが住み続けられる、小規模自治体をベースにした重層的な地方自治制度と、憲法・地方自治法の理念に基づき、住民の福祉の向上を第一にした産業政策やエネルギー政策を含む地域政策を自律的に展開する地方自治体です。