『「昭和天皇実録」講義』(古川隆久・森暢平・茶谷誠一編、吉川弘文館)を読みました。
編著者によれば、本書は『歴史研究者が読む「昭和天皇実録」』とでも名づけられるもので、その目的は、「『実録』の記述をどう読み解くべきかの視点を、研究者の立場から広く内外の人々にわかりやすく提供し、さらにはそうした作業を踏まえて『実録』の意義と問題点を具体的に示すこと」です。
200ページちょっとの手ごろな分量でもあるし、「昭和」のほぼ半分の後半30年を生きた者として、読んでおいたほうがいいかなぁ、と思って手にした次第です。
「実録」そのものは、1990年から国の事業として宮内庁で編修作業が始まり、16年で出来上がる計画がけっきょく24年かかり、2014年8月、和綴じの61巻(うち1巻は目次・凡例)、1万2,137ページとして完成し、同年9月9日に公表されたものです。
本書は、その実録を史料批判の対象の一つとして丹念に読み込み、裏づけをとりながら事実を一つ一つ解明する歴史学の常道に基づき編まれています。
新史料や新事実の記載、これまでの学説や諸資料の批判材料としての利用価値も当然に期待されたこの「実録」を、ほかの歴史史料や研究書と比較させながら詳細に解読し、一般向けに書かれているだけに、読みやすいです。