『安倍医療改革と皆保険体制の解体』(岡崎祐司・中村暁・横山壽一・福祉国家構想研究会編著、大月書店)を読みました。
ここでいう「皆保険体制」は、たんに強制加入ということだけでなく、「国民みんなが保険証を渡されていて、自分で必要と思うときには隣の県の病院でも、自分で選んで受診することができ、しかも、保険がきかない治療は原則として存在せず、さらに、医者が必要と考えて本人も納得する治療は上限なしに保険給付がなされる」という内容をもった保険のことです。
そもそも自民党政権は、憲法25条に基づく社会保障の「向上及び増進」義務を怠り、とりわけ1980年代以降、皆保険体制は大きく歪(ひず)まされてきました。
「安倍政権は、皆保険体制の歪みの拡大という域を超え、皆保険体制そのものに総攻撃をあびせ、その解体に乗り出してい」ます。
本書は、「安倍医療改革の歴史的危険性について強く警鐘を鳴らすことを目的」として書かれました。
私たちとしては、皆保険体制の解体を押しとどめるためにも、「健康の自己責任論」に対して「社会的責任論」を対置すること、公的保障を抜きにした「選択の自由」と対抗し克服すること、政府がめざす、誰も責任をとらない無責任な「地域包括ケア」ではなく、住みつづける権利の保障を位置づけ、真の地域包括ケアのあり方を対峙し、権利性と市場化・営利化は相いれないことを明らかにすることが、きわめて重要です。