憲法99条に「国民」を入れないことの重たい意味

160312憲法・なんだったっけ_R

安倍首相は、戦後歴代の内閣による憲法解釈を180度転換させたうえ、違憲が明らかな戦争法(安保法制)を強行しました。乱暴な「解釈・立法改憲」と言う以外にない暴挙です。

にもかかわらず彼は、集団的自衛権の行使について「国際法上持っている権利は行使できるという考えのもとに、われわれは憲法改正草案をお示ししている」(3月1日、衆院予算委)と言い、明文改憲を「在任中に成し遂げたい」(2日、参院予算委)と言い放ちました。

憲法99条に真っ向から反する答弁で、きわめて重大です。

憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」として、「国民」は入っていません。

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「これは意図的な選択の結果」であって、「重要なのは、国民は憲法尊重擁護義務を負わないが、公務員にはその義務を負わせる権利を持つという点」です(愛敬浩二『改憲問題』ちくま新書、2006年、213㌻~)。

「九九条に国民の憲法尊重擁護義務が明記されていないことこそ重要であり…憲法は主権者国民が権力者を縛るための手段であり、憲法を護るべき主体は為政者・公務員」だからです(辻村みよ子『比較のなかの改憲論』岩波新書、2014年、67~76㌻)。

憲法前文では「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」と言っているし、98条では「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と言っているんだから、99条は当たり前なんじゃないの、と軽く受け流すどころか、「立憲主義憲法の真髄」を示す、重たい意味のある条文であることを、私たちは選び取るときだと思います。

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なお、この99条を含めて、「『日本国憲法』ってなんだったっけ?」と題して私自身が学びなおす機会を記録(09年11月[No.1~6]12月[No.7~12])したことがあるので、参照していただけると幸いです。その2年前に浜通り医療生協組織部名で書いたものの改定版で、時代状況の繁栄は汲み取ってください。

また、3年前の通信「かけはし」でも自民党改憲草案にも触れながら訴えました。