「罹災者の入居ではない」/仮設住宅訪問/野口邦和さん

けさ早く相談に見えたかた。家屋が大規模半壊の罹災証明を受けていました。

これを前提に、お子さんの通園のこともあって家を探し、たまたま市営住宅の入居が決まったと思ったら、「この入居は罹災証明とは関係ありません」と言われ、愕然とした、と。

家を失い、家族の暮らしのために、必死で当面の家を探していたのに、「今回の入居は罹災者としてではありません」と市役所から言われショックだ、ということです。

手続き上の行き違いとはいえ、今のような事態に、窓口で被災者の立場に立った対応は、行政側の最低限の仕事ではないか、と思わざるをえません。

午前中、兵庫から来ていただいているボランティアのみなさんと、仮設住宅を訪問し、被災の状況や今の暮らしでの要望などを聞きました。

なにより切実なのは、家をなくし、職場をなくした現役世代のかたがたです。収入がないことをわかってもらっていると思ったら、水光熱費も食費ももちろん「自己責任」の世界です。

当事者ばかりでなく、年金でぎりぎりの生活だ、という高齢者からもそうした声が聞かれました。

一人暮らしの高齢者からは、「息子が何日かに一回は来てくれるが、あの地震の日以来、手足がむくんだりした自分の体調が心配。毎朝散歩するようにしているが、いつどうなることやら。自宅は広野町で、家は無事なのに、原発事故で帰るめどもない」と。

午後は日本大学専任講師で放射線防護学が専門の野口邦和さんの講演「放射能と健康リスク」。主催はいわき母親連絡会。

私がはなはだ印象に残ったのが、講演後の1時間に及ぶ質疑応答。そのなかでおひとりが、「きょうで3人目の講演を聞いた。これまでの2人は、‘逃げろ、逃げろ’というばかりの印象。お金もなく、逃げる先もない人たちにまったく無責任と感じた。きょうは言葉も選び、‘逃げろ’という話もわずかだった」と。

こういう局面での「専門家」の話も、ほんとうに受けとめ方が難しいと感じます。

私自身は、自分で準備した勉強会での資料を後押ししてもらった思いで、たいへん有意義でした。