5日目の治療と診察/待ち時間/健康長寿/ライフコース・ヘルスケア

放射線治療5日目。きょうは1週間に一度の放射線科医による診察もありました。とりわけての異常はなく、治療を継続。

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ところで、この治療の予約時間は午前9時半。毎回、朝ドラ「あさが来た」を見終えると家を自家用車で出て、病院臨時駐車場へ。5分ごとに発着しているシャトルバスへ乗り込んで病院へ。

9時前には放射線科で受付し、時間を待ち、予約時間前の9時10~15分ごろからは治療開始、といったパターン。

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その待ち時間の間、退院前に病室で読み始めていた『健康長寿のための医学』(井村裕夫著、岩波新書)を読みました。

本書では、感染症や外傷以外の疾患の総称として、国連やWHO(世界保健機構)など国際的に広く用いられている非感染性疾患(NCD= non-communicable disease)という言葉を使っています。日本でいう生活習慣病と重なりますが、NCDはより幅の広い概念のようです。

NCDが高年になってから起こる病気だから、40歳ぐらいから注意すればよいというわけではなく、胎生期から、場合によっては受胎前から考えなければならないことがわかってきた、とのこと。

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病気の予防と治療の両方の意味を含んだ「ヘルスケア」をライフコースの様ざまな時期にわたって研究し、健康増進のための方策を考えることを著者は「ライフコース・ヘルスケア」と呼びます。

これを実のあるものとするためにも、疾患の治療から予防へと舵を切ることを政府に決断させること、市民の活動を支援する自治体の体制をつくらせることも課題として示されます。

それにしてもまだ、体を休めようという態勢から抜け出せず、家では横になっている時間が長いまま。

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アホノミクスの向こう側/人間のための経済活動の復権/日本国憲法

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『みんなで行こう アホノミクスの向こう側』(浜矩子[はま・のりこ]著、かもがわ出版)を読みました。

安倍首相は昨年(2015年)9月24日、「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言しました。本書はちょうどそのタイミングで書かれ、先月(2016年2月)発行されました。ベースとなっているのは、著者が2014年10月から2015年6月まで、このテーマで話した6回の講演です。

著者がまず注意を喚起していることは、安保法制から国民の目をそらすために第2ステージによって「経済最優先」の姿勢を示そうとしているかのような解釈は「的外れ」ということ。

安倍首相は2015年9月29日(現地時間)、アメリカ議会・上下両院合同委員会で講演した同日、笹川平和財団アメリカでの講演後の質疑応答で次のように語っていました。

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「デフレから脱却をして、経済を成長させ、そしてGDPを増やしていく…当然、防衛費をしっかりと増やしていくこともできます…つまり、強い経済はしっかりとした安全保障、安全保障政策の立て直しに不可欠である…」。

著者から見れば、「生んで増やして、総員活躍。生涯活躍。こうしてGDPを増やしていくこと。それが、国防費を増やすことができる外交安全保障政策の実現につながる…その意図するところがあまりにも解りやすい」。

かくして、「平和でまともな世界と我々の間に立ちはだかろうとする壁」の「構築作業にストップをかけ」、「そのために、今、発見しておくべきことは何なのか。どのような認識を持っておくべきなのか。それを見極めるため」の「新たな旅」が本書です。

その行き着く向こう側が「多様性と包摂性」「正義と平和」「狼と子羊」の3つの出会いであり、この「三位一体の出会いが実現している場所に、日本国憲法がある」。

「人間のための経済活動の復権」という視点からの、実に楽しく、刺激的な旅です。

160305佐麻久嶺2_R【この階段を登り切った向こう側は神社】

消されゆく母子避難・自主避難/原発避難者とは誰?

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『ルポ 母子避難』(吉田千亜著、岩波新書)を読みました。

3・11からまもなく5年です。原発事故がなければ浴びるはずのなかった放射線を避けるため、事故前よりも間違いなく空間放射線量の値が高い地域から離れた地域で子どもたちを育てたい、と、願うのは、避難指示があろうがなかろうが、親として当然のことです。

ところが現実はその願いにまともに応えるものとはなっていません。

避難指示の有無で分断され、住む場所の放射能汚染の程度で分断され、被ばく影響に対する認識の違いでもまた分担されています。

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被災者同士のなかの双方向の努力によって詰めなければならない「認識の違い」もあるかもしれません。

ともかく、原発事故は福島だけの問題とされつつあり、まして福島県外から避難した原発避難者は、ほとんど無視され続けている現実です。

だいたい「原発避難者とは誰か?」。この問いに日本政府は答える意思があるのでしょうか。

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本書には、避難した母子に寄り添い続けている著者による、「自主避難者の住宅支援打ち切りに対し、一石を投じたいという思いと…消されゆく母子避難者・自主避難者のこの五年間を決して消さない、という思い」が込められています。

ルポ 消えた子どもたち/「助けてって何度も何度も思っていた」/子どもの人権・社会保障の課題として

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『ルポ 消えた子どもたち』(NHKスペシャル「消えた子どもたち」取材班、NHK出版新書)を読みました。

取材班として、「何らかの理由で社会とのつながりを絶たれた子どもを『消えた子ども』ととらえ、子ども本人に直接会って話を聞くことと、独自の調査を行って、できる限り実像に近づくことを取材の目標」としました。

8人の取材班を立ち上げたのが2014年8月、そしてその取材結果は「同じ年の12月にニュースや「NHKスペシャル 報告調査“消えた”子どもたち-届かなかった『助けて』の声」で放映されました。

160301消えた子ども帯_R【オビに引用されている「はじめに」】

本書はその番組取材によるものです。

18歳まで家に監禁され、小学校にも中学校にも一度も通えず、自力で家から逃げ出し、警察に保護。

車上生活を余儀なくされ、1年以上、小学校に通えず、父親の病死をきっかけに児童相談所に保護。

母親の精神疾患が原因で、中学校にはほとんど通えず、母親が逮捕されたことをきっかけに保護。

160301消えた子どもカバー_R【カバーソデのキャッチコピー】

本書の取材に応じた子どもたちです。

どのケースも、たまたま、本人の勇気や偶然をきっかけに社会が気づき、適切な機関へと送られたのですが、もしかしたら、今もこの子どもたちは消えたままだったかもしれない、とは著者たち。

最初の子は、「もう同じような思いをする子どもが生まれてほしくない」からと取材に応じ(というか、ほかの子たちも)、「先生も、行政の人も、誰も、誰ひとり、私の存在に気づいてくれなかった。助けてって、助けてほしいって何度も何度も思っていたのに、まるでこの世に存在していないようだった。ずっとずっとこの世にひとりきりだった」…

果たして今も繰り返されていないのか…

子どもたちの「助けて」の小さなSOSの声をすくい上げる社会的しくみが当面必要ですが、根本は、本書の「おわりに」でも触れているように、子どもの人権、社会保障の重要な課題として、こういった子どもたちがそもそも生まれない社会構築へどうするか、真剣にとりくまないとなりません。

指針は日本国憲法にあるのです。

キリスト教・イスラム教

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『これならわかる キリスト教とイスラム教の歴史 Q&A』(浜林正夫著、大月書店)を読みました。

本書も11年前(2005年1月)に発行された本で、アフガニスタン戦争やイラク戦争などをめぐり、宗教間の対立は人類にとって不可避の問題であるかのように言われていなかったでしょうか。

そんなこともあって急いで読もうと思ったように記憶しますが、読んだ形跡がまったくなく、これまた「積ん読」でした。

著者が本書で2つの宗教だけを取り上げた理由は三つ。

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一つはこの2つの宗教がとくに多くの信者を持ち、両者をあわせると世界の人口の半分以上に達する、ということ。

二つは、冷戦が終わってから、キリスト教とイスラム教の対立が世界の紛争の焦点になるという『文明の衝突』は避けられないのか、この対立は十字軍以来の宿命なのかどうか、歴史を振り返って考えてみること。

三つは、明治以来、ヨーロッパ文化=キリスト教文化に慣れ親しんできた日本人として、文化の多様性を学ぶため、キリスト教にとっての異文化であるイスラム教のことを知っておく必要があること。

本書の冒頭は、キリスト教もイスラム教も、本来はユダヤ教から出てきた兄弟だ、という話から始まります。

一度読んで理解に及ぶかどうかはともかく、全体像をながめられたような気はします。

 

社会保障活用術/排除されるべき自民改憲案

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『お役立ちトク本』(しんぶん赤旗日曜版編集部、新日本出版社)、パンフレット『全批判 自民党改憲案』(日本共産党中央委員会出版局)を読みました。

『お役立ち…』は、「しんぶん赤旗日曜版」2013年11月~15年8月にシリーズ「お役立ちトク報」として掲載した記事のうち、今後も役立つものを最新のデータで補正し、新しい情報を加筆して収載しています。

副題にあるように、本書は「知っておきたい社会保障活用術」。ところが実際の制度は不十分なうえ、周知徹底もされていません。

いまある制度を国民の権利として活用するとともに、社会保障制度を憲法にふさわしい内容にする力にしたいと思います。

『全批判…』は、2012年4月にまとめられた自民党の「日本国憲法改正草案」の全面批判で、目次にあるように、「しんぶん赤旗」2013年1月11~26日付連載に加筆したものです。

A5版パンフレットで、本文36ページ、「草案」20ページです。

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先日は樋口陽一さんの本を紹介しましたが、端的に言って「自民党改憲案は、9条2項の削除をはじめ先駆的な平和原則を否定し、天皇を元首として天皇中心の国家の維持を国民に義務付けます。人権尊重より『公益』を優先し、家族の共助を生存権保障に対置。地方自治体の役割を強調して、社会保障に対する国の役割を弱めています。日本国憲法の根本理念を含む全面改悪であり、『排除』されるべき『憲法』案です」。

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在日朝鮮人

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『在日朝鮮人』(水野直樹・文京洙[むんぎょんす]著、岩波新書)を読みました。

これも1年前、なにかをきっかけに読もうとして購入したはずですが、「積ん読」となってしまっていました。

「在日」という言葉の意味を実質的に知りたかったことと、本書カバー袖にある「2015年は、70年という節目の年になるが、日本と南北朝鮮との間には今なお問題が山積している」にひかれたと記憶しています。

本書のなかにも「4000人近くの朝鮮人が働いた常磐炭鉱」の話も出てきますが、私自身はほとんど知らない世界です。

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ともかく本書では、「韓国併合前後から、植民地期の在日朝鮮人世界の形成を経て、戦時期の試練へと至る時期」(第1・2章)、そして「朝鮮解放から、高度成長期以後の在日朝鮮人の世代交代や多様化を経て、『グローバリゼーションの時代』へと至る時期」(第3・4・終章)の構成で、在日朝鮮人をめぐる諸問題への理解を深めるよう、まとめられています。

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「多民族化する日本社会」(p.208~)にあって、在日朝鮮人のあり方の可能性について、私の理解が深まったかはまた別問題…

第二幕に入った安倍政権との攻防/アメリカ、保守支配層の積年の課題を自覚的に取り上げる安倍政権の野望を打ち砕こう!

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『現代史の中の安倍政権』(渡辺治著、かもがわ出版)を読みました。

安倍政権が不退転の決意で出してきた戦争法案に対する未曽有の反対運動のなか、昨年(2015年)9月19日、法案の採決は強行されました。

そして今、この戦争法を廃止させる運動として、法案反対運動は、発展しようとしています。

法案反対運動は、2014年12月15日に「戦争させない・9条壊すな総がかり実行委員会」という、かつてない壮大な共同の組織と、政党間の共闘の経験をつくりあげました。全国各地にも多様な共闘組織がつくられました。

150919強行採決前夜_R【参院本会議採決強行(2015年9月19日)前日には4万人が国会包囲。14日4万5千人、16日3万5千人

また、運動に参加した各団体や九条の会がこうしたとりくみにあらためて確信をもつとともに、SEALDsやママの会、学者の会など新たな階層の運動が定着しました。

さらに、これらの運動を通じ、「戦争する国づくり」をストップさせるには、政治を変える、戦争法を廃止するにはその意志を持つ勢力を議会で多数派にすることをおいてほかにないことをも自覚させました。

150831国会前10万人行動_R【「国会前10万人、全国100万人大行動」(2015年8月30日)では国会を12万人が包囲、全国では1000か所以上でとりくまれた】

戦争法をめぐり、第一幕でのこれら教訓をつかみ取って、その推進と反対の攻防の第二幕に立ち向かう時です。

本書は、第二次安倍政権が集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行した2014年7月1日直後から、戦争法を強行するに至った2015年9月19日直後までの1年数か月間に書いた論文のうちの5本に加筆したものです。

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著者は、戦争法案が国会に出た昨年(2015年)5月以降、11月までの半年余りの講演だけでも70回を超えたそうです。まさに安倍政権の戦争法との対決の同時進行の産物といえます。

アメリカ、保守支配層の積年の課題を自覚的に取り上げようとするこの安倍政権の野望を打ち砕き、立憲主義、民主主義、平和主義をとりもどすため、力をつくしましょう!

BC級戦犯裁判/裁判理解と日本人の戦争責任問題

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『BC級戦犯裁判』(林博史著、岩波新書)を読みました。

著者によるBC級戦犯裁判についての総括的な試みで、11年前、2005年に発刊されました。

この本は、著者が1980年代から90年代にかけてマレー半島各地で、日本軍の住民虐殺からかろうじて生き残った体験を聞き取った人たちを思い浮かべながら書き上げたようです。

160220BC級p.61_R【本書61ページ掲載の表】

 国際軍事裁判所条例によれば、「平和に対する罪」(A級)、「通例の戦争犯罪(戦争の法規または慣例の違反)」(B級)、「人道に対する罪」(C級)の三つが定式化されています。

著者によれば、資料収集・調査・研究によって、「やっとBC級戦犯裁判の全体像が見えてきました」。

ただ一方で、「今後、戦犯裁判に関する資料の公開や調査研究の進展によって、本書の記述も書き換えられるべき点がいろいろ出てくるでしょう」とのこと。

160220BC級カバー_R【本書の表紙カバー袖のキャッチコピー】

それでも「本書がそうした今後の研究や戦犯裁判理解にとって、さらには日本人の戦争責任問題への取り組みに何らかの貢献ができれば」との思いが詰まっています。

私はそんな問題意識も持って本書を手にしたはずなのですが、10年にわたって進展がありませんでした。

これを機に…

外泊後体重は増える/最後のモノクローナル抗体療法/血管確保に難儀/素人考え/『日本の科学者』3月号

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自宅外泊直後には、やはり体重は増えるみたいです。

きょう、あすはいよいよ、予定していた入院治療最後のR-CHOP療法で、きょうはR(リツキサン)療法=モノクローナル抗体療法でした。

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点滴のための左腕からの血管確保がうまくいかず、けっきょく右腕から。

昨年末の4クール目終了後(12月11日)、こちらへ転院前の病院での中心静脈(CV)留置チューブが2か月経過したことから、感染防止のためにとりはずし、以来、通常の点滴として今回4度目。

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【2016.02.18 朝食】

とくにCHOPという化学療法点滴の刺激が強く、点滴を続けてきた左腕の血管にけっこうなダメージが蓄積していることから、点滴のための血管確保にも難儀するようなのです。

素人考えでも、CVのような手段が必要な気がします。

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それはともかく、点滴開始後はいたって順調で、開始から4時間7分後、午後3時27分には終了です。

あすの化学療法を乗り切れるか(!?)

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点滴中、『日本の科学者』3月号特集「福島原発事故6年目を迎える現実」を読みました。

原発事故を原因とする立件可能な案件はすべて提訴し、たたかう広田次男弁護士の「原発事故被害訴訟」、県民の置かれた現実と怒りとたたかい、復興への道を探る元中学教員・菅野偉男(ひでお)氏の「原発事故満5年目の福島」。

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【2016.02.18 昼食】

避難者に対し、「帰還」でも「移住」でもなく、「(超)長期退避・将来帰還」の選択肢を示し、被災者一人ひとりが今いる場所で生活再建できる支援を強調する塩谷弘康・福島大教授の「原発災害被災者住民の苦しみ」、汚染水の現状と実態とともに、対案の立案・実施に不可欠な地下地質・地下水の実態解明が不足していると指摘する柴崎直明・福島大教授の「福島第一原発の汚染水問題」。

また「レビュー」として、国際環境NGO FoE Japan の満田夏花(かんな)氏の「甲状腺がん『多発』の中、強引に進められる帰還促進政策」も掲載されています。

いずれも、原発事故は終わるどころか、ますます深刻化・複雑化し広がっている現実を垣間見ることができます。

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【2016.02.18 夕食】