『ルポ 母子避難』(吉田千亜著、岩波新書)を読みました。
3・11からまもなく5年です。原発事故がなければ浴びるはずのなかった放射線を避けるため、事故前よりも間違いなく空間放射線量の値が高い地域から離れた地域で子どもたちを育てたい、と、願うのは、避難指示があろうがなかろうが、親として当然のことです。
ところが現実はその願いにまともに応えるものとはなっていません。
避難指示の有無で分断され、住む場所の放射能汚染の程度で分断され、被ばく影響に対する認識の違いでもまた分担されています。
被災者同士のなかの双方向の努力によって詰めなければならない「認識の違い」もあるかもしれません。
ともかく、原発事故は福島だけの問題とされつつあり、まして福島県外から避難した原発避難者は、ほとんど無視され続けている現実です。
だいたい「原発避難者とは誰か?」。この問いに日本政府は答える意思があるのでしょうか。
本書には、避難した母子に寄り添い続けている著者による、「自主避難者の住宅支援打ち切りに対し、一石を投じたいという思いと…消されゆく母子避難者・自主避難者のこの五年間を決して消さない、という思い」が込められています。