『ここまで変わった日本史教科書』(高橋秀樹・三谷芳幸・村瀬信一著、吉川弘文館)を読みました。
今月発行の本で、「数十年前の日本史教科書と現在の日本史教科書とでは記述内容や視点にどれだけ大きな違いがあり、またそれが主として日本史研究の進展にともなう学説状況の変化に裏づけられたものであることを伝えるというのが本書のねらい」です。「2000年以降、証拠とされた石器の発掘が捏造であったことが確認され、すべての遺跡名が教科書から消えることになった」のは当然としても、「変容する『聖徳太子』」、「更新される一揆のイメージ」、「『士農工商』で語れない身分制度」、「高度成長期への新たな視点」などなど、なるほど、と思わされることがたくさんです。具体的にはたとえば、「1980年代の教科書では、高度成長の要因として、技術革新、貿易の自由化、エネルギー革命(石炭から石油への転換)などを挙げるに止まっていた」ものを、終身雇用、年功賃金、企業別組合を特徴とする日本的経営がその視点として取りあげられるようになったことなどです。
なお本書は検定など現行の教科書制度が前提で、その解説もあります。