激突の時代/自分の血肉に

140209品川・激突

『激突の時代』(品川正治著、新日本出版社)を読みました。

著者の品川さんは、日本興亜損保(旧日本火災)の社長・会長を経て1991年から相談役、93~97年には経済同友会副代表幹事・専務理事を務めた財界人ですが、07年5月からは全国革新懇(平和・民主・革新の日本をめざす全国の会)の代表世話人も務めていました。

本書の「あとがきに代えて」には「2013年春」とありますが、8月29日に亡くなられました。

ともかく本書は亡くなる直前まで初めから最後までご本人がまとめられました。

第一部は、戦後の新制中学で教えることになった教え子たちが喜寿となり、ご本人が傘寿となった2012年に行なった「社会科の授業」です。

第二部は、05年から憲法九条を守ろうの講演を始めて200回を超えたことを区切りに生まれた「講座」の記録です。08年8月1日から10年3月25日までの4回連続講座です。

憲法九条を根幹に、平和を希求し、立ち位置を変えずに発信し、行動し続けた、文字通りの信念の遺著です。

同時代を重ねて生きたこうした先達の営みをなんとしても自分の血肉にしたいです。

戦後歴程

131227戦後歴裎

『戦後歴程』(品川正治著、岩波書店)を読みました。

副題が「平和憲法を持つ国の経済人して」、オビには「財界中枢で平和を求め続けた稀有な知性の記録」とあります。

071215品川正治さん

私が品川さんの「肉声」を最初に聞いたのは2007年12月15日、いわき市「九条の会」連絡会主催の講演会でした。「戦争、人間、そして憲法九条」。当時、83歳でした。

その次がその3年後2010年の日本共産党第25回大会。「平和・民主・革新の日本をめざす全国の会」(全国革新懇)代表世話人としての来賓あいさつでした。「経済界に身をおきながら、こういうところでお話しするのは、めったにない」と言いながら、「行き過ぎた大企業依存、行き過ぎたアメリカ依存、その根底には反共というものがありました。このことが、いま大きく変わり始め、反共がはっきり崩れていこうとしています」「公然と自信をもつときです」「反共は恐れるに及びません」。

いまも耳に焼きついています。

昨年8月29日に89歳で亡くなりました

彼が復員船で憲法9条に出会ったことが戦後の彼の人生を規定したであろうことは話を聞いて感じ取ってはいましたが、関西労働学校で学んでいたことや、労働運動に傾注していた時期があったことを初めて知りました。

住まいの再生/原発震災現場は…

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『住まいを再生する』(平山洋介・斎藤浩編、岩波書店)を読みました。

A5版240ページほどの本で、第Ⅰ部が「復興の枠組みを考える」として、復興に関する政策・制度について住宅再生に役立つかどうかを理念、まちづくりの担い手、「復興特区」、復興予算問題の角度から分析します。

第Ⅱ部が「津波被災地の苦闘」として、津波被災地の仮設住宅、恒久住宅、復興まちづくり計画・事業を分析します。

第Ⅲ部が「引き裂かれる原発被災地」として、原発被災地の居住権、広域避難、賠償の独特の論点を提示し掘り下げています。

ただ、第Ⅰ部・第Ⅱ部で展開されている問題もまた原発被災地では独特の課題が提起されているはずで、たぶん、編者・著者も自覚されていると思うのですが、ともかく、原発震災に見舞われた被災地の被災者の生活・なりわいの再生の視点からの住まいに関する全体的分析と展望の探求がなくてはならない、という思いです。

でないと、「それはあんたがたの問題だろう」と言われるような、苦しい思いに追い込まれるような… 確かに実態に基づく政策立案は大いなる課題です。

福島再生/被災者支援・医療・地域経済のそれぞれの立場

131227福島再生

『福島再生』(池田香代子・斎藤紀・清水修二著、かもがわ出版)を読みました。

副題が「その希望と可能性」ですが、私自身が模索する渦中の思いです。

今年(2013年)、3・11から2年目を迎える前夜の3月10日に福島県相馬市で開かれたシンポジウム「福島再生の可能性はどこにあるか?」でシンポジストをつとめた3人の話をもとに書き下ろしたものです。池田さんは翌月にも京都で「いま福島が求めていること 私たちがやるべきこと」の講演もしています。

池田さんは被災者支援活動を続けている立場から、斎藤さんは医師として震災直前に福島に移住し、それまでは約30年間にわたって広島で原爆被爆者医療に携わってきた立場から、清水さんは福島大学につとめる地域経済論の専門家として原発に警鐘を鳴らし続けた立場から、それぞれに語ってくれています。

震災復興と自治体/原発災害のもとでの復興へ向けた全体像

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『震災復興と自治体』(岡田知弘・自治体問題研究所編、自治体研究社)を読みました。

A5版ハードカバー約400ページの重厚な成果です。

研究者だけでなく、福島県浪江町長、岩手県議会議員、宮古市職員など自治体労働者、住民グループの実践家が共同で執筆し、被災地での復興をめぐる2年余りの動きを、住民自治と団体自治の視点、国と地方自治の視点から、立体的にとらえられるようにした、とのこと。

国の「創造的復興」政策の問題点を批判し、「人間の復興」のとりくみが被災者・基礎自治体を中心に広がっていることを明らかにするとともに、これからの日本の地方自治と国が進むべき道を提起してくれています。

Ⅰ東日本大震災と復興政策、Ⅱ現場から問う復興政策、Ⅲ原発災害と復興政策、のⅢ部構成ですが、私の印象としては、第Ⅲ部の原発災害を中心に、Ⅰでの市町村合併の影響、自治体と自治体職員、Ⅱでの医療・住宅・中小商工業の再建・農水産業を包含した福島県の復興へ向けた全体像を探る作業が必要と感じます。

参院選後の安倍政権/憲法が生きる日本

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『安倍政権の改憲・構造改革新戦略』(渡辺治著、旬報社)を読みました。

今年7月21日の参議院議員選挙が、自民党と共産党という、一見正反対の政党が伸長した結果は、実は構造改革から脱出したいとする国民の意欲の噴出だった、という分析には注目です。

そして参院選後、安倍政権が、消費税増税、TPP参加、社会保障構造改革などのアベノミクス第二幕によって新自由主義改革の新段階に突き進もうとしていること、また、「戦争する軍隊」づくりのために、九条の明文には手をつけずに解釈改憲でいく方向が強くなるなどの改憲新戦略を打ち立てつつあることが明らかにされます。

こうしたもとで、大企業に対するたたかいと規制、新たな国民的な担い手、平和と自立が、構造改革と軍事大国化に対する国民的共同がもつべき対案として提示されます。

その対案の旗印が日本国憲法であり、私たちがめざすべき新しい平和と福祉の日本は、憲法が生きる日本です。

地下水/安倍改憲/理科教育/教育委員会

131220教育・理科・憲法・地下水

日記の一環としての読書の記録です。読む都度に残していた記録が、日々に追われて残せなくなって、2度目です。

『地下水放射能汚染と地震』(江口工著、オークラ出版)は、著者と知り合いというかたから勧められて読みました。著者は1929年生まれなので80歳を優に超えているのですが、60数年にわたって地下開発関連の調査、研究、ボーリング機器の製造・施工にたずさわり、100か国を超える国ぐにをめぐり、チェルノブイリ原発事故収束にもかかわった、とのこと。「地下水」に関して知らなかったことを学ばされます。

『安倍改憲の野望』(樋口陽一・奥平康弘・小森陽一著、かもがわ出版)は、「96条の会」代表の樋口さん、「九条の会」呼びかけ人9人の1人の奥平さん、「九条の会」事務局長の小森さんの2度にわたるてい談の記録です。

『原子力と理科教育』(笠潤平著、岩波ブックレット)は、福島原発事故を踏まえ、これからの日本の原子力・放射線に関する教育をどう改めるべきか、科学と社会がかかわる問題をどう自分自身で考えるのかを学べる理科教育に、という問題意識で提案されています。

『教育委員会』(新藤宗幸著、岩波新書)は、「子どもたちが生き活きとすごせる『学び舎』を創るという視点」が欠けている教育改革という問題意識を根底に、「中央政府から小中学校基礎教育の現場にいたるタテの行政系列に代わるシステムの設計案」です。

 

日記の一環の読書/共同作業の本を読むのに力が入ります

131109この間の本

ひと月ばかり、「読書」の更新が抜けてしまいました。

いつもそうですが、お勧めの本を掲載しているわけでなく、私の日記の一環としての「記録」として残しています。

『2025年 介護保険は使えない?』(大阪社保協介護保険対策委員会編、日本機関紙出版センター)。今年7月に発刊された本で、社会保障制度改革推進法では、介護保険サービスを使う人の範囲を狭め、少ない財源で重度の人だけを効率よく、とされています。

『なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか』(森功著、講談社)。たまたまその院長とお会いする機会ができ、その前に読んだものです。原発建屋爆発直後7日間の取材記録です。

これら2冊は、10月1日の県議会一般質問の参考にさせていただきました。

『低線量放射線を超えて』(宇野賀津子著、小学館101新書)。著者は「ルイ・パストゥール医学研究センター」の基礎研究部インターフェロン・生体防御研究室室長ですが、本書では「免疫力の重要性や、この程度の低線量放射線ならライフスタイルの変化で克服可能だという私の考え」を、科学者の立場から語ってくれています。

『県民健康管理調査の闇』(日野行介著、岩波新書)。著者は「毎日新聞」記者で、このテーマで「スクープ」のようなものを紙上で記録していました。本書でも、「これほどまでに隠蔽や情報操作が繰り返される理由は、やはり被曝による被害を過小評価したい、ということに尽きる」という問題意識はいいのですが、私には、著者の主観を「客観」で補強しているように感じてなりませんでした。

『「国土強靭化」批判』(五十嵐敬喜著、岩波ブックレット)。著者は、「異常な力をもったこの国の政官業の支配構造をできるだけ暴き、それを克服する道を探る」(『道路をどうするか』岩波新書、小川明雄氏との8冊目)立場で、私もその立ち位置に共感してきました。本書では、「今でも基本的にはこの消費税増税には賛成…しかしこれが社会保障ではなく、公共事業に流用されるとしたら、それは国家による『大きな詐欺行為』である」としています。

『土壌汚染』(中西友子著、NHKブックス)。おもに東大農学部の教員が行なってきた調査研究のまとめです。報じられたのかどうかも知らないので、私の認識にないことがたくさんあり、たいへんに勉強になりました。

ともかく本は、執筆者と編集者との共同作業なのですが、世に送り出すまでには、売れるはずのないものは出てこないので、そんなことも考えながら読むので、力が入るんです。

憲法制定時の内閣の憲法観/安倍さんや石破さんに

131016憲法

『あたらしい憲法のはなし 他二篇』(高見勝利編、岩波現代文庫)を読みました。

編者がこの本を「世に問うゆえん」は、「憲法改正が政治課題として浮かび上がってきた現在、制定当時の内閣が『新憲法の精神』をどう捉え、その実現に努力すべき」としたかを知るこが重要だからにほかなりません。

本書では、日本国憲法が公布・施行される1946~47年に発行された三つの小冊子を紹介しています。

最初に発行されたのが、1946年11月3日、憲法公布の日に、法制局閲・内閣発行の「新憲法の解説」。憲法制定時の内閣の憲法観が如実に示されている貴重な冊子です。

次に発行されたのが、1947年5月3日、憲法施行の日に、憲法普及会の「新しい憲法 明るい生活」。憲法普及会は、「新憲法の精神を普及徹底し、これを国民生活の実際に浸透」させるために帝国議会内に1946年12月1日に設置され、1年間にわたって憲法の普及活動に従事しました。

この冊子は全国の二千万家庭に配布されました。

これらに続いて、1947年8月2日に発行されたのが文部省による中学1年生用の社会科の教材「あたらしい憲法のはなし」でした。

編者の「解説」を含めて160ページもない文庫ですから、安倍晋三さんや石破茂さんにはぜひ読んでほしいと思います。

市長選投票日/つどい/「小野恵美子の歳月」

130908つどい

いわき市長選挙の投票日です。

共産党も加わる「清潔・公正・市民本位のいわき市政をつくる会」として候補者を擁立できず、「つくる会」として候補者へのアンケートを実施し、選択の材料として自主投票としました。

投票後、午前中に小名浜地域の党支部主催の「つどい」がありました。18歳の若い介護労働者も参加してくれ、介護や医療、消費税増税、原発事故汚染水問題、けさ決まった7年後のオリンピック東京開催のことなど、話題がつきませんでした。

130908小野恵美子

帰りに本屋に寄り、『踊るこころ 小野恵美子の歳月』(大越章子著、紫草館発行)を購入、いっきに読みました。

小野さんというのは、2006年のキネマ旬報ベスト・テンの日本映画部門で一位に選ばれ、日本アカデミー賞最優秀賞にも輝いた映画「フラガール」主役のモデルとなった人で、1965年に開校した常磐(じょうばん)音楽舞踊院の一期生。

小野さんは「フラガール」大ヒットのころから早期のアルツハイマー病を発症していました。

この本のなかに、「海が見える施設のショートステイ」が出てくるのですが、当時、私の妻が所長を務めていたのでした。

彼女から、この本が出される予告があった時に「この本、買っといて」と言われたのが3~4か月前だったと思いますが、きょうになったしだいです。小野恵美子さんはまだ69歳です。