『柳家小三治の落語6』(小学館文庫)を読みました。1991年から2000年にかけての7演目の口演の文庫化です。そもそもなぜ私が小三治落語の文庫を「集め」始めて読み始めたか。10年ほど前の「赤旗まつり」青空寄席に小三治師匠が登場し、そのナマ落語を聞いて引き寄せられたことがきっかけと記憶しています。その1年後に『柳家小三治の落語1』が発行されたのではなかったでしょうか(なお、こちらも)。半年せずに「3」まで発行され、まとめて購入したものの、ついに読みもせず、今回の療養・入院生活まで「俟つ」こととなってしまいました。ここまでくれば、ビジュアル版も見たくなります。
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中東と日本の針路
長沢栄治・栗田禎子〔編〕『中東と日本の針路』(大月書店)を読みました。「中東」の世界になじみがない私にとっても、「ひとごとではないよ」と目を見開かされる思いです。各執筆者の文章から感じ取れるのは、中東の人びとにとって日本は、「軍隊をもたない」「戦争をしない」国、中東地域の植民地支配とは無縁の国と見られ、評判はよかったことです。
ところが、「中東で大きな戦争が起きるたびに、それを理由に日本の安保政策が変更されてきたという事実」は、中東研究者にっては苦い思いを抱かせるものです。それはとりもなおさず、「中東で起きた戦争や紛争を口実にして、つまりは中東の人びとの悲劇を利用して、日本が海外で軍事力を行使する道に向かって歩んできた」ことにほかなりません。これまで培われてきた、日本と中東の友情と相互理解の発展こそ、いま求められ、その大前提は安保法制廃止と憲法政治の全面実施です
「議会と自治体」1月号特集「激化する自衛隊勧誘と教育の現場」から
『議会と自治体』(日本共産党中央委員会発行)1月号の「福島切り捨て特集」とは別の特集「激化する自衛隊勧誘と教育の現場」を読みました。初めて知ること、あらためて認識することなど、多々あります。たとえば、「自衛隊をウォッチする市民の会」事務局長の種田和敏さんが「少年兵を認めない国際条約 自衛隊勧誘への対抗手段として」と題して紹介しています。
「ジュネーヴ諸条約第二追加議定書」の第4条第3項(c)は、15歳未満の児童(中学生以下)に自衛隊の訓練を体験させることを禁止しており、当然、中学生以下の自衛隊への体験入隊などはこの条約違反になります。
また、「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利条約選択議定書」第3条第3項(c)には、リクルートに関して、任務についての十分な情報提供を受けることが義務づけられており、この点で、高校生へのリクルート活動に際し、戦争法により新たに付与された任務についての説明などがされているか質問し、回答を迫り、情報提供がされていなければ、十分な情報提供をするよう求めることが肝要なこと、などです。青森県高等学校・障害児学校教職員組合の酒田孝さんは、朝雲新聞社『防衛ハンドブック』に掲載されている本籍都道府県別の自衛官数と、厚労省統計調査(「県民所得」など)や文科省調査(「大学進学率」)との相関図を掲載しています。所得が少ない道府県ほど、また、大学進学率が低い道府県ほど自衛官の比率が高くなる… 。酒田氏は、「経済的理由で大学にいけない生徒が、『安定した職業』として自衛隊を選択するという姿が浮かび上がってきます」と指摘しています。
新日本婦人の会神奈川県本部がこの間、公立中学校に対して自衛隊「職場体験」の実態調査と中止の申し入れ活動を進めているのですが、この学校訪問について、「県本部は20年間続け」、「地域の班から学校訪問を積み重ねてきた力が、今回の自衛隊の職場体験中止の申し入れに大きく役立っています」とのことで、少々、驚きました。
元日のメニュー/「福島切り捨て」/小三治の落語5/年賀状
元日の治療上のメニューは、午前中、白血球を増やすための皮下注射の9回目、きのうから始まった抗生剤点滴は10時前から30分ぐらい、午後は1日2回目の抗生剤点滴を4時前から1時間ぐらい。看護師の毎日の定時検温が4回。その間にきょうは、共産党中央発行の月刊誌『議会と自治体』1月号の特集のひとつ「終わらない原発災害『福島切り捨て』を許さない」、それに『柳家小三治の落語5』(小学館文庫)を読みました。
「福島切り捨て」冒頭の鈴木浩論文での指摘、「原発事故の原因が十分に明らかにされてこなかったがゆえに、政府・東電などによる『福島封じ込め』は、その後の全国各地の原発再稼働への展開などを見ても、一定の“効果”をあげてきたといわざるをえない。“原発亡国論”とでもいえる危機である」の認識は重要だと思います。
また、「復興計画の核心」は、「帰還までの間に準備すべき人びとの『生活の質』、地域社会としての『コミュニティの質』、森林や河川や海岸・海水などの自然環境や田畑そして都市的な土地利用に至るまでの『環境の質』をどこまで実現し、どのように復興・再生できるかというプログラムを明確にすること」であること、「復興のシナリオは、『避難指示解除』によって、避難者の帰還を促し、ふるさとの復興を促進するという…いわば『単線型シナリオ』」ではなく、「被災者の不安や生活・生業再建に適した幾通りかの選択肢を示す『複線型シナリオ』を用意」することについては、当初から提起されている課題であり、真剣に追及すべきです。
小三治の7演目は、1985~90年に演じた口演のDVDを音源に、加筆訂正のうえ文庫化されたものです。
馬・船・常民
網野善彦・森浩一著『馬・船・常民』(講談社学術文庫)を読みました。中世史と考古学のそれぞれ専門家の対談です。対談したのは1991年、最初に本が発行されたのは翌92年、文庫化は1999年。
網野氏は、森氏と親しく対話するようになってからは、「畿内中心、水田中心のものの見方、海の役割の軽視が、いかに日本社会像を歪めてきたかについて痛感し始めていた私にとって、森氏の発言は強力な支えであった」と言っています。
対談は20時間に渡るものでしたが、さすがに地名や歴史上の人名などが次つぎと出てくると、ほとんど着いてはいけませんが、そこは割り切って読み飛ばし。網野さんは対談の最後に、「ここででてきた問題についても、まだわからないことだらけだというのが現実」「地域の独自な歴史を総合的にとらえるために、文献史学と考古学、民俗学も含めて、まだまだやるべきことがたくさんある」と。
網野さんの後進のかたがたがとりくんでいるものと思います。
本書の目次 Ⅰ 馬の活躍と人間の争い(一 東国の騎馬軍団 二 東国の渡来人と馬文化 三 東と西、馬と船 四 隼人と馬 五 犠牲獣と馬 六 豪族・武士団の地域性 七 楠木正成の背景 八 弥生の高地性集落と中世の城 九 海に向かう城)
Ⅱ 海からの交流(一 北陸・能登 二 港を押さえた豪族・寺社 三 商業活動と信仰 四 隠岐と佐渡 五 吉野ケ里遺跡と神崎荘 六 出雲と越 七 海村の都市的性格 八 瀬戸内海・伊予 九 太平洋の動き 十 スケールの大きい海の交流)
Ⅲ 歴史の原像(一 鋳物と塩の交流 二 隠された女性の活躍 三 名前と系図 四 天皇と「日本」)
わがまち再生プロジェクト/「風景とは偉大な書物である」
「昼夜逆転」に近いきょう未明に、桑子敏雄著『わがまち再生プロジェクト』(角川書店)を読みました。今年3月に発行された本書の概要については、カバー袖やオビにかなり詳細に紹介されています。興味深いのは、著者は大学で教える哲学者であることと、自ら著した『環境の哲学』(1999年、講談社)を機に人生を「一変」させ、「研究室と図書館で文献の読解と解釈をもとに本を書くという生活」から「地域に身を置き、そこに見える風景や出会う人、そしてそこから考えたことを書物にする生活」に踏み出したこと。
一変させた研究者生活が、理論と実践の融合として文字通りに目に見えるような「まちづくり」の書です。「町に出れば、野に出れば、山に登れば、川を渡れば、海を望めば、そこには、文字になっていない実在の世界が広がっている。そこには無数の記号、文字が、というより、まだ生まれていない思想・哲学が埋め込まれている」。「わたしはこれを『風景とは偉大な書物である』と考えた」(「おわりに」)。
水分補給のために/「積ん読本」を着々となくそうと…「中世再考」
いつぞやの、治療中の「膀胱炎」にはさんざんな目にあい、二度とないように水分補給を図ろうと、玄米茶、数種類の紅茶、緑茶、コーヒーのティーバッグをつねに用意し、補給に励んでいます。おかげでその後、膀胱炎症状に襲われることは一度もありません。毎日の夜中のトイレの回数は増えざるを得ませんが…
きょうは網野善彦著『中世再考』(講談社学術文庫)を読みました。「積ん読」本を着々となくそうと… 1979~1985年に発表した小論をまとめた本書が発行されたは1986年、文庫化は2000年です。各小論発表時点で、「日本中世史、日本漁業史を学ぶものとして、これまでの日本人論、日本社会論に対して私の抱いてきたささやかな疑問を提示したもの」とのこと。「ささやか」とは言いますが、解説の山本幸司氏は、「中世の平民百姓は隷属民ではなく移動の自由を持っていたこと、中世の職人・海民たちは地域を越え、時には海を渡るような交流を行っていたこと‥‥日本の文化には東と西との相違を典型とするような地域的差異があること」などなどが、それまで著者が追い続けている主題のいくつかとして紹介されています。いずれにせよ、相変わらず刺激的論稿です。
東と西の語る日本の歴史
網野善彦著『東と西の語る日本の歴史』(講談社学術文庫)を読みました。もともと本書は34年前、1982年に発行され、16年前の98年に文庫化されました。私も西日本に5年ばかり住んだころ、近畿、中国、四国、九州出身の同世代の学生たちとお付き合いし、言葉だけなく、いろいろ「東と西」の違いを感じたものでした。著者も「東日本に生まれ育った私にとって、西日本のもっとも東に位置する名古屋での生活すら、食物、言葉、気風など、なじむのにかなりの時間を必要とした」と体験を語り、当時、一般に横たわっている、「日本は律令国家成立後は単一国家であるとする見方」に疑問があるとするなら、歴史の全体像も変わらざるを得ないのでは? との歴史家としての問題意識から、「日本列島の東と西に生きた人びとの生活、文化、社会の違いに注目し、その差異が歴史の中にどのように作用を及ぼしてきたかを、できるだけ明らかにしてみたい」として著された本です。「網野史学の代表作の一つ」とされている、今も刺激的で課題も多く残されている書です。私にとっては率直なところ、手元に「積ん読」状態になってしまっている本を早くなくしたい、との思いでこういう機会を活用している感じ… あと数冊…
科学の今を読む
初日(20日)のリツキサン、2日間(21・22日)のシタラビンを終えてけさを無事迎え、とりあえずひと安心です。
体調もよく、中村秀生・間宮利夫[共著]『科学の今を読む』(新日本出版社)を読みました。著者の2人は「しんぶん赤旗」社会部科学班所属。本書は雑誌『月刊学習』2010年3月号~16年9月号までの6年余り、「科学トピックス」として執筆した連載から一部を抜粋して加筆・修正してまとめたものです。「10年前には考えられなかった事実が次々浮かび上がり、人類史を大きく塗り替え」、「科学研究は文字通り、日進月歩です」。また、あらためて、「科学」の守備範囲の広さを感じます。たとえば「地球・自然・環境」をテーマにした章がありますが、化学薬品と「沈黙の春」ふたたび、「国内外来魚」と地域ごとの生物や生態系の問題、マヤ・アンデス・琉球など環太平洋の非西洋文明の盛衰と環境変動の因果関係、未来の天気予報、などなど、日ごろあまり考えたこともないようなことも取り上げられています。
そして、「科学者を軍事研究に動員しようとする動きも強まっている中、憲法9条とともに、科学の研究成果で世界の人々の幸せに貢献できるような日本の姿勢を求めていきたいと強く思」う視点での取材と執筆。共感します。
日本の地方自治 その歴史と未来
宮本憲一著『[増補版]日本の地方自治 その歴史と未来』(自治体研究社)を読みました。05年に発行された本に今年(2016年)4月に増補され、ちょうど第一回目の入院生活を終え、自宅療養中だったので、その機会に何としても読みたいと思って購入しましたが、第二回目の入院機会が予期せず来てしまい、今の読了となりました。地方自治に関わる人にはぜひご一読を薦めたい本です。「地方自治は住民が生産と生活のための共同社会的条件を創設・維持・管理するために、社会的権力としての自治体をつくり、その共同事務に参加し、主人公として統治することである」。
こう定義される地方自治。この地方自治が、地方創生という命運をかけた選択が強制される中で、自由民権、大正デモクラシー、そして戦後の革新自治体の時期につづくような市民運動がもとめられている、と著者は強調します。
関心のある章の順番で読んでみました。「地方自治とはなにか」、「3・11大災害と戦後憲法体制の危機」、「維持可能な社会と内発的発展」、「歴史的転換期の地方自治」「戦後地方自治制の危機と再編」、「戦後地方自治の展開」、「近代地方自治制の展開」、「恐慌・戦争と地方行財政」。全体として、後ろから前へ、といった感じ。いずれにせよ、読みやすい叙述で理解しやすいと思います。