9~10月のベッド上の読書記録

151103ベッド上読書

私の個人的記録なのでかんべんしてください。

9月議会中から、耐えられないわけではない腹痛を抱え込み始め、病院に泊まる機会があった9月下旬から10月末までのベッド上での読書。

『原発災害はなぜ不均等な復興をもたらすか』(除本理史・渡辺淑彦編著、ミネルヴァ書房)。原発事故による被害者の生活再建と地域再生の課題について多角的に論じます。いずれも道半ばであり、闘いが続きます(再掲でした)。

『疑うこころ、科学する眼』(安斎育郎著、かもがわ出版)。原発事故に向き合い続け、福島にも足を運び続け、あちこちに書き綴ったエッセイ30話。

『公教育の無償性を実現する』(世取山洋介・福祉国家構想研究会編、大月書店)。公教育にかかわって私費負担のあまりの大きさなど、憲法に基づく教育条件整備上の法制度に山ほどの課題があることに改めて驚かされます。

『老後破産』(NHKスペシャル取材班、新潮社)。身近に広がりつつあることは間違いありません。

『2050年 超高齢社会のコミュニティ構想』(若林靖永・樋口恵子編、岩波書店)。生協総合研究所が立ち上げた「2050研究会」が、「すべての小学校区」「元気な高齢者」「集いの館」の3つを柱にした提言。

『福祉国家型財政への転換』(二宮厚美・福祉国家構想研究会編、大月書店)。福祉型自治体づくりとあわせた私のテーマと自覚しています。

『立憲主義について』『世界史の中の日本国憲法』はいずれも佐藤幸治著、左右社。「世界史…」は今年6月の「立憲デモクラシーの会」主催のシンポジウムでの講演記録。オビには「それは“押し付け”でなく“復活”だった。」とあります。「立憲主義…」はこの講演のベースとなっている著作。オビには「古代ギリシャから続く知性の歴史に日本国憲法の精神を探る佐藤憲法学のもう一つの成果」とあります。安倍反知性・反立憲主義集団への根底的批判と私は受け取ります。

『子ども白書2015』(日本子どもを守る会編、本の泉社)。1964年から出版し続け、今年度から新たな半世紀へのスタートとなる第一冊目。子どもをめぐる全体状況を視野に課題分析・政策提起する70を超えるテーマに感心。

『海舟語録』(江藤淳・松浦玲編、講談社学術文庫)。あるかたから読むよう勧められました。

『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記1~3』(竜田一人著、講談社)。10月下旬に第3巻が発刊された原発作業員ルポ漫画です。作業員ならびに作業現場がありのままに描かれています。

151102病院前

原発災害はなぜ不均等な復興をもたらすのか

150922原発賠償

『原発災害はなぜ不均等な復興をもたらすのか』(除本理史・渡辺淑彦編著、ミネルヴァ書房)を読みました。

原発事故による被害者の生活再建と地域再生の課題について、賠償、教育、医療・福祉、放射線被曝への健康対策、避難住宅、除染、商工業、農業と多角的に取り上げられています。

こうして浮かび上がるのは、福島復興政策による影響が、地域・業種・個人などの間で不均等に現れていて、だからこそ、被害実態に即せば、支援や賠償継続は不可欠であり、政策改善の方向性もおのずと明らかになると思います。

原発事故からの再生・復興はまさに道半ばです。

「下流老人」

150829下流老人

先日の経産省への生き帰り、『下流老人』(藤田孝典著、朝日新書)を読みました。副題は「一億総老後崩壊の衝撃」というもの。

著者はこの12年間、生活困窮者支援をするNPO法人の活動に携わり、多くの生活困窮者の惨状を目の当たりしてきた、と言います。

たしかに、報道などで、日に一度しか食事をとれず、スーパーで見切り品の惣菜だけをもってレジに並ぶ、生活の苦しさから万引きし、店員や警察から叱責される、医療費が払えないため、病気を治療できずに自宅で市販薬を飲んで痛みをごまかす、誰にも看取られずひとり静かに死を迎える…といった高齢者の事例を見たり聞いたりします。

本書では、著者の実体験から、現役時にごく一般的な収入(たとえば平均年収が400万円前後)を得ていても、高齢期に相当な下流リスクが生じていることなどの「下流老人」の実情、その社会的背景、未来予想図、自己防衛策、制度や政策への提言を示しています。

資本論の発掘・追跡・探求/税金を払わない巨大企業

150802資本論・巨大企業

『マルクス「資本論」 発掘・追跡・探求』(不破哲三著、新日本出版社)、それに『税金を払わない巨大企業』(富岡幸雄著、文春新書)を読みました。

「資本論」は、不破さんが昨年(2014年)、いろいろな場で話したことがもとになっています。

未来社会論と過渡期論、恐慌論、社会的変革の主体的条件形成過程について、いずれもこれまでの「資本論」の読み方として、埋もれていたテーマだそうです。

不破さんは、というか日本共産党は、「マルクスをマルクス自身の歴史のなかで読む」ことをモットーにするわけですが、そうすると、大枠はともかく、エンゲルスやレーニンの誤解や誤りも浮き彫りにされます。

民青同盟主催の今年5月の「マルクスと友達になろう」セミナーはこの本を凝縮したエッセンス。

141215商工新聞・富岡幸雄

「巨大企業」は、昨年12月15日の「全国商工新聞」の1面に著者のインタビュー記事があって、それを見て購入して読み始めたものの、議会都合や個人的都合で中断してしまい、きのうの四倉でのつどいで大企業が実は税金をろくに払っていないことが話題になって、また思い出して読み切りました。

オビには「ソフトバンク0.006% 純利益788億8500万円→納税額500万円」、「ユニクロ6.92% 純利益756億5300万円→納税額52億3300億円」とあります。

これは、2013年3月期に、税引前純利益が一期で600億円以上ある大企業の実際の納税額の負担割合である実効税負担率を著者が調べたものです。

商工新聞には2014年3月期の表が掲載されていました。

大企業が実際に納税している実効税負担率は、法定正味税率をはるかに下回り、諸外国の法人税よりも低いことが一目瞭然です。

日本の税制の欠陥は、特定の大企業や高所得の資産家に対する優遇税制や欠陥税制の存在です。これをなくせば、消費税増税どころか、消費税などいらない、というのか、「税の表も裏も知りつくした」著者の「遺言」です。

老人に冷たい国・介護保険は高齢者の生活問題の一部分/私の「戦後70年談話」・戦争体験者が語り継ぐとき

150728石川往復2冊

石川県への往復の車中、『老人に冷たい国・日本』(河合克義著、光文社新書)、『私の「戦後70年談話」』(岩波書店編集部編)を読みました。

「老人に冷たい」の著者は、NHK「無縁社会」「老人漂流社会」に協力・出演もしていました。すでに30年以上前から貧困と孤立について研究し、高齢者、とりわけ一人暮らし高齢者の貧困と社会的孤立の現状分析と、これに基づく提言をしています。

私たちも注意しなくてはならないのは、高齢者福祉は介護保険ではないこと。介護保険利用者は高齢者の2割もいません。介護問題は、高齢者の生活問題の一部分であり、貧困と社会的孤立の大部分は、介護保険サービスを利用していない高齢者のところで発生していることを直視する必要があります。

「戦後70年談話」は、1945年の終戦時に5歳以上で、戦前・戦中・戦後と生き抜き、今も各界で活躍する41人の「いま、これだけは語っておきたい」メッセージです。

政界からも、海部俊樹・村山富市の2人の首相経験者、元官房長官・自民党幹事長の野中広務さん、共産党の不破哲三さんが執筆しています。

ちなみに不破さんは、安倍首相など「この潮流のめざす中心目標は、『日本の戦争』の復権と、この戦争への反省を込めた日本国憲法第九条の廃棄」だと喝破し、「この野望を打ち砕くためも、さらには将来にわたって、この種の勢力の台頭を許さないためにも、戦争を体験した世代が、語るべきことを語り、引き継ぐべきことを次の世代に引き継ぐことが、いま強く求められている」と語ります。

原発避難者の声・エネルギー自治・ソーシャルワーカーの仕事/地域に希望

150728北海道行き4冊

北海道で移動中、3冊の岩波ブックレット『原発避難者の声を聞く』(山本薫子・高木竜輔・佐藤彰彦・山下祐介著)、『「エネルギー自治」で地域再生!』(諸富徹著)、『知りたい! ソーシャルワーカーの仕事』(木下大生・藤田孝典著)、それに岩波新書『地域に希望あり』(大江正章著)を読みました。

すべて岩波書店なのはたまたまです。

「原発避難者」は、富岡町からの避難者たちの「とみおか子ども未来ネットワーク」(現在はNPO法人)が行なってきたタウンミーティングの支援に継続的に携わってきた若手社会学者である4人の著者たちによるものです。

「現在の復興政策がいかに避難者を追いつめているか、どうすれば避難者主体の復興が成し遂げられるか」を、当事者の声によって示してくれます。

「エネルキー自治」とは、「地域住民や地元企業がお互い協力して事業体を創出し、地域資源をエネルギーに変換して売電事業を始めることで、地域の経済循環をつくり出して持続可能な地域発展を目指す試み」です。

本書では、長野県飯田市を事例にして、エネルギー供給システムにいま起きつつある革命的な変化の持つ意味を明らかにします。

「ソーシャルワーカー」は、「社会に働きかける者」(ソーシャル=社会、ワーカー=働く者)です。本書で、その仕事の内容を実践者の立場から具体的に描写し、その視点と姿勢、職業としての専門性を説明し、現在の働く現状を見て、現代社会に欠かせない職業として選び取ってもらいたい思いが込められています。

「地域に希望」は、農山村を中心に全国各地でさまざまな住民主体の地域づくり活動が積み重ねられている事例のルポルタージュです。

群馬県南牧(なんもく)村、島根県邑南(おおなん)町・旧弥栄(やさか)村・旧柿木(かきのき)村、福島県会津地方、岐阜県石徹白(いとしろ)地区、宮城県旧北上町、福島県相馬市、香川県高松市、宮城県丸森町大張地区、福島県旧東和町、埼玉県小川町。

山村での可能性、有機農業や自然エネルギーによる地域循環経済、漁業者とNGOの協働、商店街の復活、農業と地場産業の連携など、魅力ある地域創生は、「地域創生」の掛け声より早く、豊かにとりくまれています。

マルクスと友達に/埋もれていた理論の全面的な復活の仕事

150720マルクス

『マルクスと友達になろう』(不破哲三著、日本民主青年同盟中央委員会パンフレット)を読みました。

これは今年5月、民青中央が主催した「科学的社会主義セミナー」での、不破さんの講演の記録です。

休憩をはさんだとは思いますが、3時間のセミナーでの話に、「時間の都合で省略した部分を補うなど整理・加筆」し、「注をくわえ」ているので、かなり充実したパンフレットです。

85歳の不破さんが、「この変革の時代をもっとも全面的に満喫できる世代であり、自分たちで切り開く日本の未来に、自身の未来を生かすことができる世代」に向けて語った記録です。

マルクス(1818年5月4日~1883年3月14日)に、「その時代を力をつくして生き、後世の私たちにすばらしい理論と思想を残してくれた先輩として、親しい気持ちで」ふれてほしいという思いで不破さんは準備したそうです。

「なぜ、今、マルクスか?」「マルクスの理論は世界の常識になりつつある」「経済学。『利潤第一主義』が資本主義経済の推進力だ」「マルクスの眼で、現代の日本と世界の現実問題を見てみよう」「社会変革。生産活動を人間と社会のための活動という本来の姿に取り戻す」「マルクスの革命論。多数者革命と民主共和制」「日本共産党の革命理論の基本」「二十一世紀は、日本でも世界でも、歴史的な大激動の時代となる」の章立てです。

「世界の他の党のあいだでは、ほとんどおこなわれなかった」「埋もれていたマルクスの理論の全面的な復活の仕事」の成果であり、とにもかくにも一読の価値あり以上の価値ありと思います。

150721 涼む

東電は大津波の予見は可能だった

150706原発賠償

『福島原発事故賠償の研究』(淡路剛久・吉村良一・除本理史[編]、日本評論社)の第2章「責任論」の「Ⅰ 東京電力の法的責任 2  大津波の予見は可能だった」(山添拓弁護士)の文章から、時系列で私なりに整理してみました。

色や下線はあまり気にしないでください。

1990 東北電力社員技術者ら「仙台平野における貞観11年(869年)三陸津波の痕跡高の推定」。

この研究成果を待つまでもなく、1970年代の女川原発の申請・着工当時からの津波対策への考え方が、東電とは違っていた。東北電元副社長・平井弥之助氏の強い主張で地盤高を14.8mにした。当時の計算法に従えば津波高3.9m(のち9.1mに修正)

1993 北海道南西沖地震

19951月17日 阪神・淡路大震災

同 年7月 地域防災対策特別措置法

→文科省・地震調査研究推進本部設置。地震の総合評価は「地震調査委員会」。

1997 4省庁「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書」

1998 7省庁「地域防災計画における津波対策強化の手引き」

(これら「報告書」「手引き」では、既往最大という従来の津波想定の考え方を転換。福島県沖を含む宮城県沖から房総半島沖の領域のどこでも起こり得る最大の地震は、1677年の延宝房総沖地震[M8.0クラス]とされる)

東電が2008年にした試算で、福島第一原発のもっとも近くでこの地震が発生すると、敷地に到達する津波高さは13.6m

2000 電事連「津波に関するプラント概略評価」→各原発の津波の想定値と解析誤差を考慮した想定値の1.2倍、1.5倍、2倍の津波高さによる原発への影響福島第一原発1~6号機は、想定水位が5m、いずれも1.2倍の津波で「海水ポンプのモーターが止まり、冷却機能に影響が出ることが分かった」。

2001 箕浦幸治・東北大教授らが、貞観津波の再来周期は800年から1100年と推定(この年は、869年から1132年経過)

20022月 土木学会原子力土木委員会・津波評価部会(1999年度設置。委員・幹事の過半数は電力業界、1億8,378万円の研究費全額を電力会社が負担)が「原子力発電所の津波評価技術

→福島第一原発の設計津波再考水位は5.7m、6号機の一部で敷地高さをわずかに上回り、設置レベルのかさ上げで対応できる結論

20027月31日 地震本部地震調査委員会「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」→震源域について1896年「明治三陸地震」のモデルを参考に、領域内のどこでも発生しうる

東電が2008年、「長期評価」に従い福島第一原発での津波高さを試算。最大で5号機のO.P.+15.7m敷地高さがO.P.+10mの福島第一原発における浸水は確実

東電は、「文献上は福島県沖で津波地震が起きたことがない」という理由で対策見送り。「報告書」「長期評価」が過去に起きていない地震は将来も起きないという考え方を明確に退けたにもかかわらず、従来の考えに固執し対策を検討すらしない。

200412月 スマトラ沖地震

2005 文科省が「宮城県沖地震における重点的調査観測」委託研究(東大地震研・産総研)

2006 原子力安全・保安院、独立行政法人原子力安全基盤機構、電気事業連合会、電力各社による「内部溢水、外部溢水勉強会」

東電は、5号機について、10mの津波水位が長時間継続すれば非常用海水ポンプが使用不能となること、14mであれば建屋の浸水により電源を喪失し、原子炉を安全に停止するための機能が失われることを報告

20067月 東電がアメリカで報告したマイアミ論文

2008 佐竹健治らが貞観津波の数値シミュレーション報告 

 同 年 上記報告を受け東電が福島第一原発について試算。1~4号機でO.P.8.7m、6号機でO.P.+9.2m不確実性を考慮して2~3割高くなった場合には、いずれも敷地高10mをはるかに超えることは確実。

2010 産総研ほか「宮城県沖地震重点的調査観測 平成20年度成果報告書」

貞観津波が断層の長さ200km、幅100km、すべり量7mの地震による津波であること、津波の到達範囲は宮城県から福島県の沿岸であること、過去4000年間に450年から800年の間隔で繰り返し発生していること

20113月3日 東電は、地震本部による「長期評価」改訂作業について、非公式会合で「貞観地震が繰り返し発生しているかのようにも読めるので、表現を工夫していただきたい」      

20113月11

知っておきたい認知症/認知症初期集中支援チーム・認知症地域支援推進員の数と体制整備の行政責任

150526認知症

『最初に知っておきたい認知症』(杉山孝博著、新日本出版社)を読みました。

著者は、1981年から「公益財団法人 認知症の人と家族の会」の活動に参加し、今は会の全国本部副代表理事を務めている医師です。

本書は、「しんぶん赤旗 日曜版」に「知っておきたい 認知症」と題して2014年11月9日号から2015年4月5日号まで20回連載した記事をまとめたものです。

ご自身は認知症に関する書籍を多数著作・監修していて、この本の出版に迷ったそうですが、連載中の反響や単行本化の要望も大きかったそうです。

私も介護や医療に事務方としてかかわってきた立場上、この課題にどう向き合うかをいつも考えるわけですが、これほど簡潔・明瞭に語ってくれる本は初めてです。

端的に言うと、著者が認知症の人を介護する介護者に話す言葉が本書を凝縮していると思います。「本人の感情や言動をまず受け入れ、それに合うシナリオを考え演じられる名優になってください。それが本人にとってもあなたにとっても一番よい方法です。そして、名優はときに悪役を演じなければなりませんよ」。

「とにかく、認知症の人によい感情をもってもらい、『自分は周囲から認められている』『ここは安心して住める』と感じられるように日頃から対応することが、一番楽で上手な介護になるのです」。

問題は、本書で触れてはいませんが、医療・介護推進法による改定介護保険で「地域包括ケアシステム構築に向けた地域支援事業の充実」のひとつに「認知症施策の推進」が位置づけられているものの、その施策の「お寒い」現実です。

支援を要するすべての認知症の人びとに手が行き届く実効あるとりくみを、その位置づけにふさわしくするよう、「認知症初期集中支援チーム」「認知症地域支援推進員」の数や体制を責任をもって整えるよう行政にさせないとなりません。

150526朝の散歩

専門家としての教師/21世紀に対応する教師像

150525専門家としての教師

『専門家として教師を育てる』(佐藤学著、岩波書店)を読みました。

著者はこの10年間、「世界教育学会創設理事として、全米教育アカデミー会員、アメリカ教育学会名誉会員としてアメリカの教師教育改革に参加し、メキシコ教育省政策顧問、上海市教育局、ソウル市教育部の顧問として、さらには『学びの共同体』の国際ネットワークの組織と30カ国約500校の学校訪問という多くの国際的な経験に恵まれ」、その経験による知見とデータを本書に反映させています。

この間の教育の「危機」の現れとして、国際調査による「学力低下」がしばしば取り上げられますが、むしろ、日本の転落が著しいのは、「メディアが無視してきた教師に関する一連の調査結果」であり、「実態に即してみると、日本の教師の危機の本質は、教師教育(研修)の高度化と専門職化の著しい遅れ」だと指摘します。

なぜそうなってしまったのか、「それらの謎解きから開始し、教師教育の理論的実践的な探求をとおして、これから推進すべき改革のグランドデザインを描き出すこと」が本書の目的です。

「一般の市民、学生にも理解しうるよう、可能な限り簡潔で平易な叙述」に留意もされ、今世紀に対応した教育問題の核心と教師像に触れることができます。