『専門家として教師を育てる』(佐藤学著、岩波書店)を読みました。
著者はこの10年間、「世界教育学会創設理事として、全米教育アカデミー会員、アメリカ教育学会名誉会員としてアメリカの教師教育改革に参加し、メキシコ教育省政策顧問、上海市教育局、ソウル市教育部の顧問として、さらには『学びの共同体』の国際ネットワークの組織と30カ国約500校の学校訪問という多くの国際的な経験に恵まれ」、その経験による知見とデータを本書に反映させています。
この間の教育の「危機」の現れとして、国際調査による「学力低下」がしばしば取り上げられますが、むしろ、日本の転落が著しいのは、「メディアが無視してきた教師に関する一連の調査結果」であり、「実態に即してみると、日本の教師の危機の本質は、教師教育(研修)の高度化と専門職化の著しい遅れ」だと指摘します。
なぜそうなってしまったのか、「それらの謎解きから開始し、教師教育の理論的実践的な探求をとおして、これから推進すべき改革のグランドデザインを描き出すこと」が本書の目的です。
「一般の市民、学生にも理解しうるよう、可能な限り簡潔で平易な叙述」に留意もされ、今世紀に対応した教育問題の核心と教師像に触れることができます。