柳家小三治の落語4

『柳家小三治の落語4』(小学館文庫)を読みました。再発・入院直前に、本屋で見かけて購入していました。

オビにあるように、「1~3」発行後、8年を経ての刊行だそう。「前口上」によれば、師匠自身が出版社に「出版してよ」と迫ったらしく、なぜかと言えば、「この噺はやってますよ、というしるし」「何か手掛かりを残しておきたい」というわけで、「一度使ったものをまた役ただせよう」という「噺のリサイクル」のため、とのこと。要は忘れてしまうから。音源はいずれもDVDには収録されているもので、文庫化にあたり、全編にわたって加筆訂正をしています。この4巻の8つの噺(8席)は、1970~1983年に収録した演目です。

介護保険法と自治体の役割

『[新版]改定介護保険法と自治体の役割』(伊藤周平・日下部雅喜著、自治体研究社)を読みました。2014年6月、安倍政権は、医療法や介護保険法など合計19もの法律を一括して「医療・介護総合確保法」を強引に押し通し、翌(2015)年5月には、今度は国民健康保険法や健康保険法など9の法律を一括して「医療保険制度改革法」を強行しました。

本書は、医療保険制度改革法が強引に通されようとしていたさなか、改定された介護保険法を中心に、これらの流れをどうとらえ、何を展望し、自治体に具体的に何を求め、制度改善に活かすか、といった視点で2015年3月に発行した本の「新版」で、今年10月の発行です。

介護保険の「大改定」にあたり、最初の本をむさぼり読み、昨年9月議会の一般質問(県議会動画)でずいぶんと取り上げました。

本来なら、今後のまちづくりに不可欠な課題として、系統的・継続的に徹底してフォローするつもりでした。

できれば、当時の質問(県議団ホームページ)など、参照していただけると幸いです。

「なぜ異次元金融緩和は失策なのか」/ボタンの掛け違い

いつ以来なのか、実に久しぶりに一冊の書籍を読み切りました。建部正義著『なぜ異次元金融緩和は失策なのか』(新日本出版社)。日銀が、首相と仲良しで首相の言うことをよく聞き、二%の「物価安定の目標」の掛け声のもと、「量的・質的金融緩和」、その拡大策、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」、長短金利操作付き量的・質的金融緩和」とあれこれしていますが、日銀ウォッチャーで、金融論が専門の著者が、根本に立ち返って懇切・ていねいに、副作用・弊害を含め、その「失策」の理由を語ってくれています。

そもそもデフレの真の原因は、貨幣的・政策的要因にあるのではなく、1990年代末以降の賃金の切り下げという実物的要因にあります。最初からボタンの掛け違いをしているのが日銀です。

きょう付け「しんぶん赤旗」経済欄に、これにかかわるコラム掲載。

2日目治療終了/右手甲への点滴/「日本の科学者」

DeVIC療法2回目の2日目も無事終了。

カプセル仕様の制吐剤は入院定期処方薬の朝食後薬とともに服薬。点滴は午前10時45分、例によって制吐剤から。

161018%e3%81%ae1その後、2種類の化学療法剤2時間ずつ。161018%e3%81%ae21609235%e5%8c%96%e5%ad%a63最後にまた制吐剤。終了時間午後5時15分。予定では午後4時15分でしたが1時間遅れ。161018%e3%81%ae4

原因は明白。点滴針を右手の甲にさしてあって、手首を上側に持ち上げる格好をとると、点滴の流れが遅れたり止まったりしてしまうのです。161018%e3%81%8d%e3%81%ae%e3%81%86%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%ae%e7%82%b9%e6%bb%b4

きょうは点滴中、家に届いていた『日本の科学者』11月号を読んでいて、最初のうちはマーカーを左手に持って必要なところに線を引いていたところ、調子に乗ってくると、線を引こうが引くまいが、右手にマーカーを持ち替えて手首を上へ向けた格好で読み続けてしまうのでした。161018%e7%a7%91%e5%ad%a6%e8%80%8511%e6%9c%88

「日本会議」史観の乗り越え方/抑制的な主張に即してこそ

『「日本会議」史観の乗り越え方』(松竹伸幸著、かもがわ出版)を読みました。%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%bc%9a%e8%ad%b0%e5%8f%b2%e8%a6%b3まずは、日本会議の主張が抑制的になったところが侮れない、という視点が強調されます。組織の結束力を維持して、国民の支持のもとに、当面で言えば改憲を本気で達成しようとするわけですから、当たり前かもしれません。

そのうえで、とりわけても日本の近現代史について「光と影を統一的に捉える見地」に立つことを提起。%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%bc%9a%e8%ad%b0%e5%8f%b2%e8%a6%b3%e3%82%aa%e3%83%93%e7%9b%ae%e6%ac%a1以下、そのまま引用すれば、「日本の植民地支配をめぐる問題…と、日本が植民地として支配されず、独立を保ったこととの関係をどう捉えるかという問題」、

「日本の戦争が侵略だったのか自衛だったのかという問題」、

「現在の東南アジア地域における日本の戦争の問題」、

「『先の大戦』に対する裁きの問題…東京裁判(極東軍事裁判)の評価をめぐる問題」、

最後に、「若者に歴史の何を受け継いでいくのか」、「戦争で亡くなった兵士に何を言うべきなのか」を考察します。

いずれにせよ、歴史観こそが日本会議を日本会議たらしめており、日本会議の実際の主張に即した批判を通してこそ、巨大な影響力を持ちつつある日本会議を乗り越えることができる、と著者は考えています。著者は安倍晋三と同い年。

軍事依存経済/現実を憲法に近づける希望

『軍事依存経済』(しんぶん赤旗経済部、新日本出版社)を読みました。161009%e8%bb%8d%e4%ba%8b%e4%be%9d%e5%ad%98アベ政治が、経済成長の一環として、原発だけでなく武器輸出を位置づけていることを見るだけでも、経済と軍事の一体不可分は露骨です。161009%e8%bb%8d%e4%ba%8b%e4%be%9d%e5%ad%98105%e3%8c%bbそもそも安倍首相の認識からして、「経済を成長させ、そしてGDPを増やしていく‥‥当然、防衛費をしっかり増やしていくこともできます」(2015年4月、「笹川平和財団米国」主催シンポジウムでの講演後の質疑応答で)。161009%e8%bb%8d%e4%ba%8b%e4%be%9d%e5%ad%98%e3%82%aa%e3%83%93%e7%9b%ae%e6%ac%a1ともかく、首相は、軍事産業の育成・強化を政策目的に掲げる防衛装備庁などという行政組織まで設置して見せましたが、「戦争のための再軍備を可能とする産業は許されない」(ポツダム宣言第11項・1945年7月26日)に違反することは明白です。

日本の右傾化の現実を、憲法が示す理想に近づけることが、いまを生きる私たちの大いなる希望であり仕事です。まだ間に合います。

武器輸出大国ニッポンでいいのか

『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(池内了・古賀茂明・杉原浩司・望月衣塑子著、あけび書房)を読みました。161007%e6%ad%a6%e5%99%a8%e8%bc%b8%e5%87%ba杉原さんが本書企画のきっかけをつくった「武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)」の代表。

池内さんは、もともと宇宙物理学者で私も一ファン。現在は「科学・技術・社会論」で大活躍中。先月(9月)25日、「九条の会」の12人の新たな世話人に選任されました。161007%e6%ad%a6%e5%99%a8%e8%bc%b8%e5%87%ba%e3%82%aa%e3%83%93%e8%a3%8f古賀さんは2011年9月まで経産省官僚。昨年(2015年)3月には、3年間務めた「報道ステーションコメンテーター」を何らかの事情で降板。

望月さんは東京新聞記者。

「国是」とされてきた武器輸出三原則が、安倍政権のもと、2014年4月1日のエイプリルフールにあっけなく撤廃されましたが、その日本の「死の商人国家」に向かう危険な流れを明らかにしたうえで、これに抗する論理と人びとの現時点での姿を浮き彫りにすることが本書のねらいです。161007%e6%ad%a6%e5%99%a8%e8%bc%b8%e5%87%ba%e3%82%ab%e3%83%90%e3%83%bc%e8%a3%8fなんにせよ、私はつくづく感じますが、「9条」を持つ日本国憲法を選び直す国民的大運動のときです。

スーパー望遠鏡「アルマ」が見た宇宙

『スーパー望遠鏡「アルマ」が見た宇宙』(福井康雄編著、日本評論社)を読みました。久しぶりに読書した、という感じ。%e3%82%a2%e3%83%ab%e3%83%9eこれは入院前、一般紙の広告を見てたまたま直前に手にした本でした。%e3%82%a2%e3%83%ab%e3%83%9e%e3%82%aa%e3%83%93本書でも最後に強調されていますが、「宇宙の深い理解は、我々人類の宇宙の中での価値を教えてくれます‥‥単なるロマンに留まらず、我々人類がこの先どのように生きていくべきなのか、という大切なことを教えてくれる」のが天文学です。%e3%82%a2%e3%83%ab%e3%83%9e%e3%82%ab%e3%83%90%e3%83%bc%e8%a2%96観測の技術が進歩し、宇宙の姿や広がりが徐々に明らかになり、そしてその中の人類の存在意義と生き方を問う、天文学のこの姿勢がたまらないんですね。

ちなみに「アルマ」とは、この本では知っていることが前提になっていて(私は知らなかった)、調べると、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)の頭文字で、Atacama は南米チリのアンデス山脈北部の標高5000mの砂漠だそうです。

給食費未納/義務教育を受けることに伴う保護者負担の費用の無料化の実現こそ

『給食費未納 子どもの貧困と食生活格差』(鳫咲子[がん・さきこ]著、光文社新書)を読みました。160924%e7%b5%a6%e9%a3%9f%e8%b2%bb

2015年の調査で、小中学校の給食費の補助制度を設けているのは全国の約2割、199自治体だそうで、その三分の一は2014・2015年度から開始しています。補助内容は、全員対象の一部補助、全員対象の全額補助、多子世帯への補助など様ざまです。 160924%e7%b5%a6%e9%a3%9f%e8%b2%bb%e3%82%ab%e3%83%90%e3%83%bc%e8%a2%96

学校給食で子どもに直接食事を保障することが、子どもの食のセーフティネットであり、どんな状況の子どもでも受けられるべき社会保障である、と給食の歴史から学ぶことができると著者。

お隣り韓国では、小学校の94%、中学校の76%で学校給食が無料化されています。

この日本では、憲法で義務教育は無償であるとうたわれながら、給食費をはじめ多くのお金がかかります。

子どもの権利条約、子どもの貧困対策法と大綱、諸育基本法と基本計画の考え方からしても、給食費をはじめとする義務教育を受けることに伴う保護者負担の費用の無料化の実現を訴えています。

日本会議の研究

『日本会議の研究』(菅野完[すがの・たもつ]著、扶桑社新書)を読みました。この間読んだ一連の「日本会議」関連本では、今年5月1日でいちばん早く発行されています。160919%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%bc%9a%e8%ad%b0%e7%a0%94%e7%a9%b6著者は3年前に同じ新書からの noiehoie 名義『保守の本分』で「右翼であり保守だ」と自認はしているようですが、もともと一般企業の中間管理職経験者のようで、その際、徹底してデータを集め、そのデータを冷静に分析し、「偏り」や「ばらつき」を生む根本原因を突き詰めていく品質管理の手法を身に着けたようです。160919%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%bc%9a%e8%ad%b0%e7%a0%94%e7%a9%b6%e3%82%aa%e3%83%93その手法が「日本会議」を暴くのにも見事に活かされているように思います。

70年安保の時代に淵源を持ち、その時代から休むことなく運動を続け、どんな左翼・リベラル陣営よりも頻繁にデモを行ない、勉強会を開催し、陳情活動を行ない、署名集めをし、さまざまな挫折や失敗を乗り越え、その運動は安倍政権を支えるまでに成長し、国憲を改変するまでの勢力となり、このままいけば、この「民主的な市民運動」は、日本の民主主義を殺すだろう、とは「むすびにかえて」の著者の言葉。

だが、民主主義を活かすのも「民主的な市民運動」にほかなりません。著者も「そこに希望を見いだすほかない」と。160919%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%bc%9a%e8%ad%b0%e9%96%a2%e9%80%a3%e6%9c%ac(日付は初版発行日)