避難者への市民意識の断面/分断解消の政府責任

いわき市では、原発事故によって、双葉郡8町村からの2万3,293人はじめ、2万4,077人の避難者が暮らしています(6月1日現在)。

一方、いわき市から市外へ避難しているのは、住民票を異動していない人が1,812人、住民票を異動して関係維持を希望している人が2,693人、あわせると4,505人です(8月1日現在。いずれも「いわき市災害対策本部週報」9月3日17時発表から)。

いわき市では、原発建屋爆発後、半数を超える市民が避難しました(市外47.7%、市内7.7%、あわせると55.4%[市によるアンケート調査結果2012年11月])。3,120件の対象数で40.4%の回収率ではありましたが、市の人口(2011年3月1日時点の推計34万1,453人)に換算すると18万9,000人余りの市民が避難したことになります(2年前にこのブログでもふれたことがありました)。

ところがいわき市に避難指示が出されなかったために、いわき市民への賠償はされず、一律額として、事故初期の精神的苦痛への慰謝料とその後の追加費用で、大人であれば12万円で打ち切りです。「なぐさめてやるんだからお金を受け取ってもう忘れましょう」と言わんばかりのこの姿勢を許せるはずもなく、私は請求もしていません。

そんなこんなで、津波による多くの犠牲者を出し、原発事故による「自主」避難によってたいへんな思いをし、いまだ事故収束の見込みも立たずに精神的苦痛を強いられ続け、健康不安も続き、子どもたちの将来を案じ続け、なのにまともな賠償もされないいわき市民は、多くの避難者を受け入れることで、道路事情や医療事情や買い物事情などの生活の変化もあり、避難者に対する思いもきわめて複雑です。

【原発避難者に対する意識】
140907避難者への意識

そんな市民の意識調査をいわき明星大学人文学部現代社会学科が行ないました。

今年(2014年)1月、平地区と小名浜地区のそれぞれ750人、計1,500人を対象にした限られた調査ではありましたが、45.6%の回収率です。

【原発事故に対する意識・対応】140907事故への意識・対応

これを見ると、市民の半数近くの46.7%は「放射能の健康影響への不安」をもっており、また、74%は「原発事故の補償をめぐる不公平感」をもち、64%が原発避難者は「お金をもらえてうらやましい」と感じ、その一方で、72%が「原発避難者は生活の見通しがつかず大変だ」と思っています。

【原発避難者の将来についての考え】140907避難者の将来の考え

また、避難者の将来については「原発避難者の選択を尊重」と考える人が45%、「いわき市民になってもらう」が27%、「なるべく早く元の地域に戻ってもらう」が16%と続いています。

ただこの設問を見ると、「元の地域へ」と答えた人以外は、避難を受け入れている、ともとれるかもしれません。

140907まざりな9.1号

この結果分析は進行中だそうですが、そんな報告をいわき明星大学の高木竜輔・准教授が「いわきフォーラム90」の「ミニミニ講演会」でしてくれたようです(「まざりな」235号、9月1日発行)。

高木准教授は、「原発避難者といわき市民の間だけでなく、いわき市民同士においてもお互いの立場を理解すること…このような分断を生み出した政府もいわき市の複雑な状況を理解(し)…分断の解消へ向けた対策を図るべき」と提起しています。

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