『空き家問題』(牧野知弘著、祥伝社新書)を読みました。
震災直後の時期でしたが、津波被災地を歩いていた時に、地元のかたが「あそこは空き家。ずいぶん長いが、こんなことになったから、所有者はもう戻らないんじゃないか」と言っていたことを思い出しました。
少し高台だったので、津波の影響はなかったものの、地震によっていかにも傾いた感じでした。
こうした空き家はどうなるんだろうなぁ、と思ったことが、実は全国的に大問題であることを、この本であらためて知りました。
あの時も、「この場所では、借りたい人も買いたい人もいないもんなぁ」と話をしたことを覚えていますが、同じことが、この震災とはまったく別に、進行しています。
いわき市内でも、早くに開発された団地などは、道路はせまく、店舗は撤退し、バス路線も廃止され、その団地の空き家を買い取って新たに住もう、とは思えない団地も少なくありません。
本書でも紹介されていますが、丘の上のある「超」高級戸建て住宅街に住んでいた高齢者たちが、JR駅近くに分譲されたマンションに住みかえようとしたところ、前の住宅に買い手がまったくつかず、家の「買い替え」ができない現実があります。
また、住んでいない家屋を解体更地にしてしまうと、その土地の所有者の固定資産税が実は跳ね上がるために、空き家を解体せず、そのまま放置せざるを得ない現実もあります。
こうした「空き家問題」の現状と自治体などの今の対応についてはたいへんに参考になります。
第5章はこうした現実を受けて、「日本の骨組みを変える」提言ですが、自治体の数を大幅に削減するとか、そのための企画立案は中央集権的な発想で行なうべきだとかの話には、なぜそうなるの? と大いなる疑問です。
いずれにせよ、空き家問題は日本社会の大きな問題であり、その解決には日本社会と政治の骨組みを変える必要を感じます。