「日本国憲法」ってなんだったっけ? 09年版・№7      

日本国憲法第25条。「①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 ②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」。   

 第一項は、国民の文化的最低限度の生活権を権利として明記した人権宣言です。

 第二項は、一項の権利に対応した国の責務を定めています。

 人間らしい生活を営むことを、万人の権利と宣言した点に特筆すべき意義がある、といわれる条文です。連合国軍総司令部のマッカーサー草案にはなく、衆議院の審議で入れられました。ちなみに、1945年12月、鈴木安蔵らの憲法研究会では「国民は健康にして文化的水準の生活を営む権利を有す」という条文を用意していました。

 ここで目を向けておきたいのは、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と言っている憲法前文。「恐怖」とは、専制・暴虐・抑圧・暴力、何よりも戦争の恐怖、「欠乏」とは、餓え・渇き、病い、衰弱、極貧など、要するに貧しさ。平和・福祉国家の実現によってこれらから「免かれ」、その国家の使命は「平和のうちに生存する権利」を保障すること、ということです。

 前文が示していることは、第9条の平和理念と第25条の福祉理念は不可分な関係にある、ということではないでしょうか。9条改憲に固執する民主党に、25条を社会保障再生の根拠にする姿勢が見えないことと関係ありそうです。