住み続ける権利/総括的な権利

『住み続ける権利』(井上英夫著、新日本出版社)を読みました。

貧困、過疎、震災、ハンセン病といった、研究者としての現場体験からこの権利の確立を提起する書です。

それらの現場を見たときに、侵害されているのは働く権利、医療を受ける権利、社会保障を受け健康で文化的な生活を営む権利、教育を受ける権利、居住・移転の自由といった種々の人権です。

その全体状況を見たときに、「住み続け」られなくされている、ということです。住み続ける権利を保障するには、それぞれの個別の人権がしっかり保障されなければならない関係にあり、総括的な権利が「住み続ける権利」です。

「住み続ける権利」の構造は、平和的生存権(憲法前文・9条)を基底的権利として、「居住・移転の自由」(同22条)を土台にしながら、生命権(同13条)、生存権(同25条)、労働権(同27条)、教育を受ける権利(同26条)、労働基本権(同28条)、財産権(同29条)などを含め、人間らしく生きるための人権として立体的に構想されるべき、と、現場に立脚した話は説得的です。

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