雇用崩壊と社会保障/福祉を解体した介護保険

『雇用崩壊と社会保障』(伊藤周平著、平凡社新書)を読みました。

労働者派遣法の制定・改定で雇用の危機が進み、小泉構造改革によって社会保障が機能不全に陥ってきた経過を跡付けています。

政策理念が欠如して政策間の不整合が著しく、内容よりパフォーマンスが目立つだけの議員、個々人が医療・福祉サービスを商品として買えればよいとする考えに偏りすぎの民主党の姿も浮き彫りにしています。

そのうえで日本の雇用保障・社会保障再構築のための課題を提起しています。財源も、消費税ではけっきょく、「増税がいやなら、雇用保障・社会保障は拡充しない」ことでますます機能不全に陥りやすくなるのであり、「所得税や法人税の累進性を強化し、それを主な財源とすべき」と明快です。

注目したのは介護保険にかかわる評価と展望。

「老人福祉法にもとづく高齢者福祉措置制度にターゲットを絞り、その解体をねらった介護保険」(154㌻)

「医療・福祉分野における財政構造改革法というべき介護保険法」(160㌻)

「障害者自立支援法や後期高齢者医療制度のモデルとなった介護保険」(182㌻)

「『福祉の介護保険化』政策は、福祉サービスを商品化し、福祉給付についての公的責任を消滅させ、財界からの要求にそって、福祉的支援を必要とする高齢者や障害者、子どもを『儲け』の対象とする」(205ページ)。

そのうえで、

「社会福祉を『福祉』の名に値しない制度へと変えてしまった介護保険法も、障害者自立支援法とともに廃止し…高齢者・障害者総合福祉法を制定すべき」と提案しています。

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