『マリー・キュリーの挑戦』(川島慶子著、トランスビュー)を読みました。
私と同い年の著者は、本書を書くことが、「社会のジェンダー・バイアスのために、女の子と科学が切り離されていた『自分の』時代を描くこと」でもあったと言います。
また、「書きながら、自分自身の人格や行動パターンが、大日本帝国に生まれ、先の戦争を体験した両親や祖父母、あるいはそれ以外の自分の周りにいた大人たちから、深い影響を受けていることを実感しました。そして、科学者になろうとしていた自分は、まさにそういうことを無視したかったのだということに思い至りました」とのこと。
1867年、ロシア占領下のポーランドに生まれた少女が、「物理の先生になって、同時に政治的行動においても祖国の独立に力を尽くそうとした夢」をもっていたことから本書の話が始まりますが、マリー・キュリーの伝記というより、「歴史の中に生きる存在としての人間の可能性」を若い人たちに語りかけている本だと思います。
著者とは、大学時代、キャンパスで時どき話を交わした、というか、私からちょっかいを出していたことを思い出します。30年も前のことです。私がおぼえているだけだとは思いますが。