思い出袋/「勁く」/「北斗七星」

『思い出袋』(鶴見俊輔著、岩波新書)を読みました。岩波書店の読書家の雑誌『図書』に80歳から7年にわたって連載した「一月一話」をまとめ、終章に「書ききれなかったこと」を書き下ろした本です。

80代の戦後思想史の専門家がどんな言葉を残してくれているのだろうか、という関心から読みました。こうしたかたがたが残してくれる言葉は財産だと思うので。

それより、オビに「勁くしなやかな思想と言葉」と書いてあるのですが、「勁く」が読めなくて、ほんとうに久しぶりに漢和辞典を調べました。「つよく」と読みます。

鶴見さんは、「九条の会」呼びかけ人の一人でもありますが、私の頭に強烈に残っているのが大学時代に読んだ久野収さんとの共著『現代日本の思想』(岩波新書、1956年発行)の次の言葉です。

「すべての陣営が、大勢に順応して、右に左に移動してあるく中で、日本共産党だけは、創立以来、動かぬ一点を守りつづけてきた。それは、北斗七星のように、それを見ることによって、自分がどのていど時勢に流されたか、自分がどれほど駄目な人間になってしまったかを計ることのできる尺度として、1926年(昭和元年)から1945年(昭和20年)まで、日本の知識人によって用いられてきた」。

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