『長寿を喜べる高齢者医療制度を!』(寺越博之著、日本医療福祉生協連合会「虹のブックレット」No.95)を読みました。
厚生労働大臣主宰の「高齢者医療制度改革会議」が昨年8月20日にとりまとめた「高齢者のための新たな医療制度等について」(中間とりまとめ)に基づいて、その内容と問題点を明らかにするのが本書の目的です。
「改革会議」は昨年12月20日に「最終とりまとめ」を公表していますが、基本は「中間とりまとめ」となんら変わりません。
民主党が09年の総選挙で「廃止」を公約し、政権交代後も「年齢でもって差別する信じられない制度」(鳩山前首相)と言っていた後期高齢者医療制度はいまだに続いています。国民との約束を守れないことがほんとうに信じられない政権です。
その「信じられない制度」は医療費を削減する目的で自公政権時代につくられたわけですが、その手段とされたのが「医療給付と負担のリンク化」。要するに「高齢者の医療費がふくらんだら、高齢者自身が負担せよ。負担がいやなら医療にかかるのは我慢せよ」というしくみです。
「社会保障は負担能力に応じて負担し、必要に応じて給付するもの」という国自身が言っていることを否定し、憲法25条が国に命じる「社会保障の向上と増進」に真っ向から反するしくみです。
ところが民主党政権は、後期高齢者医療制度の最大のこの問題点を「一定の利点」と評価して、「新しい制度」の骨格にすえる姿勢です。
しかもこれをテコに、保険税(料)の大幅アップ、市町村独自の減免制度が後退させられかねない「国民健康保険の広域化」へ進めようというねらいです。
政治理念を持たない民主党政権は、政局が危ういどころでなく、国民生活を自民党時代以上に危うくする可能性大です。