無縁社会

『無縁社会』(NHK「無縁社会プロジェクト」取材班編著、文藝春秋)を読みました。

テレビ放映もされたこの取材は、50歳で派遣の仕事を失い、路上生活をしていたある“ひとりぼっち”の男性の出会いから始まりました。

これを機に、「引き取り手のいない遺体」の急増で対応に追われているという自治体を二か月半余りをかけて調査した結果、年間3万2千人という数字。年間自殺者数に匹敵する数字。

しかも取材を進めていくと、そのほとんどが、身元が判明している家族がいるのに、引き取られないケースだということもわかってきました。

そのうえ、行き倒れや身寄りがない人びとが、大学病院に「献体」として提供されるケースもふえている、とのこと。生前に登録する「篤志体」とはもちろん別で、3万2千人には含まれない「無縁死」です。

「単身化」、「未婚化」、「少子化」といった家族のあり方の変容が「無縁社会」の拡大を推し進めている現実があります。

本書には、「この流れは止められない」と問題提起するだけであきらめるのでなく、無縁社会になることを防ぐ、弱きものへのいたわりを忘れない「日本人の心」を取り戻す可能性をも模索する姿勢が示されます。

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