『医療の選択』(桐野高明著、岩波新書)を読みました。
著者は独立行政法人国立病院機構理事長です。
「社会保障を削減し、医療を自己責任にするという選択をした結果、人と人とが分断化され、社会から連帯意識が消失し、恵まれた少数の人々と恵まれない多くの人々との間に著しい格差が生まれる。そのような未来を、われわれ日本人は望んで選択するだろうか」。
新自由主義的な医療改革の方向はあり得ない、端的に言って、日本の医療制度をアメリカ型にすることを拒否する著者の意志表示だと私は思います。
また著者は、「社会保障には、①生活安定効果、②所得再配分効果、③労働力保全効果、④産業・雇用創出効果、⑤資金循環効果、⑥内需拡大効果」があり、「社会保障の経済効果については、一方的ではない冷静な見方が大切である」ことも提起しています。
こうして随所に、日本の医療をめぐる現状や将来について納得できる話が多く、参考になります。
ところが、「終章」や「おわりに」では、「社会保障目的の消費税増税をさらに追加する方が、国民の痛みは少ないはず」とする見解、自己責任を前提とした社会保障制度改革推進法や社会保障制度改革国民会議報告を持ち上げる考え方に同意はできません。
真剣に日本の医療の未来を考える書だと思いますが、日本国憲法、とくに25条に基づく国の責任にほとんど触れられないことに、違和感を感じました。
新書を一日で読み切るなど、まずないことでした。3日前、「かけはし」「あしたの風」をセットして配る準備をしているのですが、きのう、きょうと雨模様。お盆だし、どうしようかな。