『日本の労働を世界に問う ILO条約を活かす道』(牛久保秀樹・村上剛志著、岩波ブックレット)を読みました。
ILO条約というのは、国際機関のILO(International Labour Organization 国際労働機関)が採択した条約のことで、国際労働基準を構成する世界の労働法のことです。
ILOは第一次世界大戦後の1919年に創設されましたが、その第一回総会で第一号条約である「工業的企業における労働時間を一日八時間かつ一週間四八時間に制限する条約」を採択してから、2011年に採択された条約まで189の条約にのぼります。
ILOの労働時間条約はその第一号から始まって18あるそうですが、日本はどれも批准していません。
日本が批准しているのは49条約だけで、140条約は未批准。条約は、二度の総会にかけられて、三分の二の賛成で採択されていますが、日本の態度は世界の少数派に属しています。
それ自体驚きますが、いま日本では、非正規労働者の拡大、長時間労働の深刻化、過労死や過労自殺の増加、違法な労働条件を労働者に貸すブラック企業の跋扈(ばっこ)、メンタルヘルス疾患の拡大、解雇の横行、若年層の就職難、公務員バッシングなど、労働者をめぐる問題は深刻で、社会の持続性そのものが問われています。
本書では、日本の教員、郵政、運輸、医療の分野でILOの活用が始まっていることなど、これからの日本の労働者の生活、雇用、安全と健康の確保、安心して働ける権利の確立にとって、ILO条約を活用することの重要な役割を具体的に示してくれています。