『危機に直面している日本の大学』(日本科学者会議大学問題委員会編、合同出版。合同ブックレット⑤)を読みました。
昨年12月発行で、今世紀に入ってから昨年10月末までの日本政府・財界による「大学改革」のねらいと実態の告発、そしてこれにとって替わる大学ビジョン構築の訴えです。
いま、研究現場では、「業績一辺倒」「新自由主義」的な大学運営によって、あらゆる研究分野で研究資金獲得のための過度な業績主義が横行し、本数稼ぎの研究論文の増加や論文のねつ造やデータの使い回しなど、研究者のモラルを逸脱した事態が指摘されています。
大学のこうした荒廃が、メガ・コンペティション(大競争)を勝ち抜くためにグローバル企業が求める成長体制、高付加価値を生む事業分野に研究資金と人材を重点配分する成長戦略に、大学と学術が従属させられている過程で起こっています。
入試倍率、就職率、留年率、学位取得率、科研費採択率、論文数・特許獲得数、外部資金獲得額、任期制教員採用数などの数字を大学に競わせて、学術の発展を通じて社会に貢献する大学本来の機能が発揮できるとは思えません。
人類にとって普遍的な価値をもつ公共財としての学術とそれを伝授する場としての大学現場の連帯した力で、大学「再生」の展望を切り拓く時ではないでしょうか。