『物理学入門』(武谷三男著、ちくま学芸文庫)を読みました。
この本は、1952年に岩波新書として、1977年には季節社から増補版として出版され、先月、文庫本として筑摩書房から発刊されました。
武谷さんは、オビにもあるように、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹(1949年、中間子の存在の予言)、朝永振一郎(1965年、量子電磁力学の基礎的研究)、南部陽一郎(2008年、素粒子物理学における自発的対称性の破れの発見)にも影響を与えた物理学者で、2000年に89歳で亡くなっています。
なぜ今この本が? と思いつつ買い求めたわけですが、上條隆志さんの「解説」によれば、「とりわけ福島原発事故を経て、だまされずに、真実を見抜く力をだれもが身につける必要性は高まっている」から。
「科学者たちが、時代と社会の制約の中で、どうやって次のステップを切り開いたか、節目となった重要な考察のひとつひとつの、位置づけと論証の仕方が整理され」、「それがいかに困難で、自分が身につけてきた知識や考え方を否定するどれほどの苦しみを味わったかが、感じられる本だ」と。
武谷さん自身が「はしがき」で、「物理学の概念の変革は、科学がいかにとらわれない考え方を必要とするか、とらわれない考え方はいかに困難なものであるかを示している」と記しています。