『農と言える日本人』(野中昌法著、コモンズ)を読みました。
たぶん、新聞広告で書名を最初に見た印象が、うまくシャレたつもりかなぁ、などと軽く思ったのですが、後日、書店で現物を見て購入し、読んでみてえらく感銘を覚え、最初の印象が恥ずかしく思えてしまいました。
原発震災後、福島の農家と農業現場を歩き、「福島での調査・研究をとおして農業の力に改めて驚き、それを謙虚に受け止め、農家とともに歩みつつある」、「福島県、そして東日本の農業の復興と振興は、農業現場と結びついた本来の農学の復権でなければならない」と著者は言います。
そして、「原発事故と放射能汚染、福島の農家の苦悩、それに対する政府と東京電力の対応を見るにつけ、田中正造から学ぶことが多い」、また、「水俣病の教訓を現場で学び、被害者と各分野の専門家が協力して地域の自治を進め、被害者の人権回復を行ってきた」医師の原田正純さんの実践から、足尾銅山事件と水俣病事件の教訓にも学ぶことの重要性にもふれています。
「農業の『育てる』力を基礎として、『農と言える』人たちを『育てる』ことこそ、いまの日本農業に必要だ」の言葉が、現場の農民の実践に支えられているだけに、ずしりと響きます。