憲法改正をどう考えるか/ポツダム宣言の否定

130528憲法改定

『いま、「憲法改正」をどう考えるか』(樋口陽一著、岩波書店)を読みました。

著者は、今月23日に研究者らで発足した「96条の会」の代表に就いた、日本を代表する憲法学者です。

本書では、昨年12月総選挙に先立って公にされた自民党「憲法改正草案」(2012年4月27日決定)を、憲法そのものを考える対象にしています。

著者によれば、昨年の自民党「草案」は、これまでの改憲論とは「別格の意味」があります。「国防軍」創設も重大ですが、これまでの改憲論が好んで口にしていた「欧米諸国と価値観を共有する」という意味での「普通の国」の標準からはみ出す一連の条項に、その国防軍も位置づけられている、という問題です。

現行憲法13条の「個人」を「人」に書き換えてしまうことを含め、自民党「草案」は、人類普遍の原理を否定している、という指摘は重要だと思います。現に「草案」は、前文から「人類普遍の原理」を削除し、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利として信託されたもの」とする97条も削除です。

それは、日本の自由民権運動から憲政擁護運動を経て、大正デモクラシーと無産政党の議会進出までの歴史を指して、ポツダム宣言が「日本国国民の間に於ける民主主義的傾向」と言った、その歴史の積み重ねすら拒否する、という姿勢です。

「『草案』は全体として一つの独自な考え方にのっとっておおむね注意深く編成されており、そうである以上、成り立ちうる一つの主張である。それを是とするか非とするか…私たち一人ひとりの判断にかかっている」だけに「『考え』を磨いておくことが必要です」。

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