SPEEDI

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『SPEEDI なぜ活かされなかったか』(佐藤康雄著、東洋書店)を読みました。

「SPEEDI」というのは、「緊急時迅速放射能影響システム」(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)の頭文字をとったものです。今や「スピーディ」という普通名詞になった感があります。

著者は気象庁気象研究所を9年前に定年退職した気象学の専門家です。原発事故時には、福島市に転居して7か月目だったそうです。

著者自身、「このような事故の際に最も早く公表されるはずだと私は聞いていた」というSPEEDI。

実はこのSPEEDIは、事故発生直後、放出源情報を定量的に把握することが困難な状況では、緊急時モニタリング計画を策定するための資料としての使用が想定されていただけでした。また、放出源情報が得られた場合は、「計算により得られた予測図形を配信する。配信された予測図形は、避難、屋内退避等の防護対策の検討に用いる」とされていました(原子力安全委員会の「環境放射線モニタリング指針」)。

なので、もともと、避難住民が頭上から降り注ぐ放射性物質にまみれないように、緊急避難情報として発信する姿勢ははなからなかったわけです。やはり「安全神話」に支配されていました。

本書では、SPEEDIとはどんなものであるのか、今回の事故でなぜ有効活用されなかったのか、また「移流拡散シミュレーション」とはどんなもので、どんな可能性・効用・限界があるのか、SPEEDI情報をタイミングを失せず有効活用するにはどんなことが必要か、が述べられています。

なおイントロの第1章では、福島第二原発裁判(1975年に福島地裁で開始、1992年に最高裁で結審)で、当時から原発の危険性、大地震・大津波による全電源喪失、炉心溶融、水素爆発、放射性物質の大気・海洋への放出などを指摘していた人たちが、福島にいたことも述べられています。

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