県の病院局に2010年度、県立病院(矢吹病院、喜多方病院、会津総合病院、宮下病院、南会津病院、大野病院の6病院)が納付した消費税を聞きました。約760万円でした。
一方、控除対象外消費税(損税)について、先月25日に全国自治体病院協議会が公表した「消費税に関する緊急調査」に基づくと、2010年度の福島県立病院全体の損税は約1億7,000万円です。
税率が上がれば当然この損税もふくらみます。どうしてこんな莫大な損税が発生するのでしょうか。
簡単に言うと、医療機関の収入の大半は保険診療によるもので、患者さんの消費税負担はゼロです。その保険診療を提供するために、医療機関が購入する薬剤・医療材料・委託・水道光熱費・各種サービスなどについては医療機関が消費税を支払います。これを患者さんに転嫁できないしくみです。したがって、医療機関での損税の発生は必然的です。
損税が発生しているのに、医療機関がなぜ消費税を納付するのでしょうか。それは、医療機関の収入は、保険診療だけでなく、健診や文書や自由診療による収入があり、こちらは利用者から消費税を負担してもらうことになっているからです。
このしくみについて、2009年12月3日の厚生労働省社会保障審議会医療部会に日本医師会の竹嶋康弘委員が資料を提出していました。
ここでは、売上10億円でそのうち1割の1億円が自由診療分で、受け取る消費税額は500万円。
仕入は4億円で医療機関が支払う消費税額は2,000万円。
医療機関が控除できる「仕入税額控除」は、支払った2,000万円のうち、売上の1割の自由診療分に対応する1割の200万円。
したがって、医療機関としては、受け取っている消費税額500万円から、200万円を差し引いて300万円を納付させられるわけです。
しかし、仕入にかかる消費税は2,000万円ですから、けっきょく、控除対象外消費税(損税)は1,800万円です。
ちなみに、全国自治体病院協議会の発表によれば、2010年度の1病院あたりの平均でみると、実際の納付消費税額は641万7,000円、損税は1億2,414万円。消費税率が10%になると、損税は2億4,827万9,000円にふくらむと試算しています。
その発表資料では、診療報酬を課税対象としてゼロ税率など税率を軽減すること、医療機関が購入する薬品・診療材料は非課税にすること、仕入れにかかる消費税は全額控除対象にすること、など、病院からの意見が付されています。