巨大津波と生態系/トンボを襲うテントウムシ

『巨大津波は生態系をどう変えたか』(永幡嘉之著、講談社ブルーバックス)を読みました。

著者は、図鑑に使うような動植物の写真を1枚ずつ時間をかけて撮り続けてきた自然写真家。

あの巨大な津波によって自然環境に起こったことを、ひとつでも多く、正確に記録するため、福島県いわき市から青森県下北半島まで、昨年12月までの約100日間、5万kmを走ったんだそうです。

1年経っていない段階なので、「種の絶滅という『大きな絶滅』は幸いにして起こっていないようでも、個々の場所での『小さな絶滅』が積み重なっている」ようです。

重要だと思ったのは、「津波そのものよりもむしろ、土地利用が進んだことによる、砂浜や湿地の孤立と分断の影響」、「津波の影響ばかりでなく、それまでに人間が続けてきた環境改変によって、震災以前の時点で『隅に追いやられた状態』になっていたものが多かった」という指摘。

また、環境アセスメントが震災によって免除が相次いでいても、「従来の取り決めを守る努力がなされ、砂浜の瓦礫撤去や堤防修復の際には県内の有識者への聞き取りを行うことで、希少種への配慮がなされていた」福島県職員の仕事への評価がされています。

「羽化するオツネントンボを襲う2頭のジュウサンホシテントウ」の第5章の扉写真にはちょっとびっくり。テントウムシの大発生によって、餌が欠乏したために、通常では考えられない場面だそうです。

6月までにはもともとテントウムシが少なくなっていたことによってアブラムシが大発生し、今度は大量の餌を前にテントウムシが遅れて大発生したようなのです。

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