『誰でも安心できる医療保障へ』(二宮厚美・福祉国家構想研究会著、大月書店)を読みました。
副題に「皆保険50年目の岐路」とあります。
私は今回の震災ほど、医療が住民にとってなくてはならないものであることを如実に示したことはない、ぐらいに思っています。
本書の「序」が言うように、「医療はそれ自体が防災機能を有するわけではなく、緊急対策時において中心舞台の役割を果たすわけではない。だが、被災直後の地域・住民にとって医療はどこでも生存権保障の最前衛部隊をになった。同時に、無事生き延びた人々全員にとって、医療はラスト・リゾート(最後の拠り所)であった。避難先には、いつでもどこでも医療のスタッフ・設備が不可欠であった」。
自然災害と原発人災が重なったことで、医療のこうした面が浮き彫りに見えましたが、実は「医療は人生のあらゆる時間と場所、一日二四時間のいついかなるときにも、人間の生存に必需」なのです。
こうした医療が憲法25条に基づいて、福祉国家型医療保障として、現制度の消極面・弱点を克服するにはどうするか、その展望をはっきりと示してくれます。
もちろん、国民による「たたかい」なくしてその実現はありえません。