『被爆者医療から見た原発事故』(郷地秀夫著、かもがわ出版)を読みました。
著者はこれまで30数年間、約2000人の被爆者の健康管理にかかわってきた医師です。
7年前に原爆症認定集団訴訟にかかわるまでは、目の前の被爆者に起こっている健康障害を原爆放射線によるものとはかんがえておらず、病気のほとんどの原因を原爆放射線とは関係ない、と言い続けていたんだそうです。
その当時のご自分が、原子力エネルギーの利用を推進する人びとの偏った知識のみを信じ、「放射線障害は軽微で、原子力は有用だ」という考えに、気づかないうちに洗脳されてしまっていた、というのです。
原発事故後、日本の国民が、真実を知らされない中、不安にさらされ、国に選ばれたその道の権威といわれる人びとに頼らざるを得ない状況は、かつての自分と同じだ、と。
本書は、報道される原発事故情報の何がどう足りないか、どう真実と違うのかを明らかにしたい思いと、多くの国民が「被爆国」という概念を、もう一度、明晰に認識しなおす機会を提供したい願いで書かれました。