消費者の権利

『[新版]消費者の権利』(正田彬著、岩波新書)を読みました。

1972年に刊行された前著の新版で、全面的に書き下ろしたものです。著者は昨年、本書出版の最終作業中、80歳で亡くなりました。

非食用の輸入事故米穀が食用として流通していた事件、輸入冷凍餃子の中毒事件など、消費者をめぐる食の問題ひとつとっても、消費者の権利を守ることが重要な課題になっている、と強烈な問題意識から書かれていることがわかります。

人間の権利の尊重は、現代社会の基本原則だから、行政がその権利の確立を考えた対応のしくみをつくる責任は言うに及ばず、そのためにも、人間の権利と事業者の権利をどう調整するかの発想ではなく、事業者による事業活動は人間の権利の尊重を前提として成り立つものでなければならない、と明快です。

消費者行政の基本は、消費者の四つの権利(①消費生活における安心・安全・自由の権利、②商品・サービスを正確に認識することができる表示をさせる権利、③価格の決定などの取引条件の決定に参加する権利、④情報化社会において消費者が必要とする情報の提供を受ける権利)を確保することにあることを、消費者の立場で、具体的に説得的に述べられています。

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