『検証・地域主権改革と地方財政』(平岡和久・森裕之著、自治体研究社)を読みました。
私がまず懸念するのは「主権」のありか。岡田知弘さん(京大教授)が指摘していたのは、「『地域主権』と述べる際の『主権』のありかは、憲法上の主権者である国民・住民ではなく、あくまでも300程度に集約化された『基礎的自治体』なのです」(『道州制で日本の未来はひらけるのか(増補版)』(自治体研究社、2010年2月刊)。
「平成の大合併」で基礎的自治体である市町村は3232(1998年10月1日)から1817(2006年10月1日)に43.8%減ったわけですが、民主党はこれをさらに300程度まで減らすことが目標です。「基礎的自治体」といいながら、住民から自治体がますます遠ざかる「市町村合併」が前提なんでしょう。
「主権」の主体がそういう広域自治体で、住民ではないようなのです。
本書では、「地域主権改革」が、小泉構造改革時代の「『三位一体改革』と同じく、財政再建のための道具としての役割を担わされる可能性がきわめて高くなった」と評しています。
そのうえで、地方財政改革の内容は、地域に根ざした安全・安心な暮らしをつくりだす社会構造の改革のための方向を示してくれています。