『狂言じゃ、狂言じゃ!』(茂山千之丞著、文春文庫)を読みました。
もともと2000年に単行本として晶文社から発刊され、2004年に文庫化された当時に購入したものが、これまた今ごろになりました。
「狂言に、初期のバイタリティーを取り戻すために、こんなやり方はいかがでしょうかという『いろいろな策』を皆様といっしょに考えたい」という動機で、「狂言の飾り気のない姿を、出来るだけ多くの人たちに見ていただきたくて」書かれています。狂言は、名もない巷(ちまた)の人たちの生活スケッチであり、登場人物に固有名詞を持たせていません。その点で、「吉本新喜劇が現代の狂言であり、狂言が室町時代の吉本新喜劇であるのです」。
冒頭に引用されている『梁塵秘抄』の言葉に、「来るべき中世の、自由で民主的な社会の幕を開く」当時の庶民のバイタリティーがあって、この中から狂言が生まれた、とのこと。
著者は2010年に87歳で亡くなられています。