『日本列島では原発も「地層処分」も不可能という地質学的根拠』(土井和巳著、合同出版)を読みました。
著者は1957年、発足間もない原子力燃料公社に仕事を求め、この公社を引き継いだ動力炉・核燃料開発事業団で定年退職するまで、30余年にわたって地質面から原子力畑を歩んだ人です。
その間、発見されて間もない人形峠でのウラン資源調査、原子力関連施設の基盤の地質調査、放射性廃棄物を地層処分する候補地の地質調査など、北海道北部から九州南部まではもちろん、北米のカナダ楯状地(たてじょうち)や北欧のバルト楯状地にある、約6億年以上前の地質時代とされる前カンブリア紀の古く固い岩石の実態も踏査し、また、放射性廃棄物の地下深部での処分に関する国際機関の会議などで海外諸国の対策状況を見てきました。
その著者の目から見て、福島原発事故後の「再稼働」の動きは、「後は野となれ山となれ」主義が健在であり、「無責任な態勢を今後も続けようとする動きそのもの」と断罪し、日本の国土で超長期にわたって高レベル放射性廃棄物と人の社会とを隔離するための「地層処分」は不可能だ、と断定します。
そのうえで代替する方法の研究や実験に転換することを訴えます。
「わが半生をかけて伴走した『原子力』が今の有様のまま立ち往生するのは痛恨の極みであり、贖罪の一片として」書かれた本です。