『原発ゼロで日本経済は再生する』(吉原毅著、角川oneテーマ21)を読みました。
著者は2010年から城南信用金庫の理事長を務めています。福島原発事故後の2011年4月1日、「原発に頼らない安心できる社会へ」を発表し、職員による被災地支援も続けています。
本書は今年4月に発行されて話題を呼び、手元にあるのは6月末の再版です。
安倍政権のもとで原発を「ベースロード電源」と位置づけ、原発再稼働に進むなか、「事故の原因は究明できたのか。汚染水はどこでどう処理するのか。核のゴミの問題に道筋はついたのか--。何ひとつ解決していないにもかかわらず、まさに官民一体となって、原発再稼働をなし崩し的に推し進めようとしている。そして、それを強力にプッシュしてきたのが財界のトップたちである」として、本書タイトルの根拠を展開してくれています。
著者自身も、事故前までは「原発肯定派」であり「政府や電力会社、マスコミ、学者たちによって作り上げられた原発の『安全神話』を妄信していた人間の一人だった」と言っています。
本書の特徴は、原発事故を受けた「原発ゼロ」を根拠をもって示してくれると同時に、信用金庫が銀行と違い、「会員の出資による協同組合組織の非営利法人」であることの歴史と現在の存在意義に立ち返り、世界に広がる協同組合の理念を具体的に説いてくれる点にある、と私は思いました。