現在の国連憲章は、「紛争の平和的解決」をもっとも根本的な精神としています。仮想敵という考え方を捨て、敵味方を含めた集団的体制をつくり、その体制内部で相互に侵略を防ぐ、という「集団的安全保障」という考え方です。
この国連憲章は、1945年2月の米英ソ首脳会議(ヤルタ会談)を経て、その原案をもとに1945年4~6月にかけてサンフランシスコに50か国の代表が集まり、最終日の6月23日に署名されました。
時期的に言えば、第二次世界大戦が終了していない時期であり、広島・長崎の原爆投下前でした。
この憲章には、当初の原案にはなかった個別的自衛権・集団的自衛権の規定が最終段階で追加され、第51条となりました。
とくに、他国への攻撃を自国への攻撃とみなして反撃する権利とされる「集団的自衛権」はこの時初めて盛り込まれたもので、個別的自衛権とはまったく別物です。
集団的自衛権を憲章に書き込む動機を、アメリカ全権代表だった、のちに国務長官となるジョン・F・ダレスは著書『戦争か平和か』で「かりに共産党が南米諸国中の一国の政府の支配権を握ったとすれば…合衆国又は他の米州条約調印国は、ソ連の同意がなければ、平和のための強力な行動をとることができない」からだと書いています。
要するに、国連憲章の「紛争の平和的解決」の根本精神や「集団的安全保障」の考えにはまったく反し、自分の勢力圏で、ソ連の拒否権に邪魔されることなく軍事行動をとる、ということです。
いまだ「戦後」を迎えず、アメリカが一方で憲章制定を推進しながら、他方でひそかに原爆投下準備を進めていたことの反映です。
ともかくそういう経過で盛り込まれた、憲章のなかの例外中の例外である集団的自衛権について、日本政府は60年間に及ぶ議論の積み重ねで、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としてきました。
そもそも政府によれば、自衛権の発動には①急迫不正の侵害があること②これを排除するため他の適当な手段がないこと③必要最小限の実力行使であること、の3要件があり、とりわけ日本への直接的な武力攻撃があるかどうかが、「必要最小限」の実力行使の核心的要件とされます。
もともと安倍自民党は、憲法9条を改定して国防軍を創設することをねらい、これが困難と知るや、改憲手続きの緩和(96条改定)の邪道に走り、これが「立憲主義破壊だ」と批判されると、96条を無視して多数独裁の閣議決定で憲法破壊に走る。
まさに戦争する国づくりへ向けたクーデターであり、断じて許されません。