『歴史認識を問い直す』(東郷和彦著、角川oneテーマ21)を読みました。
副題は「靖国、慰安婦、領土問題」。
著者は1945年生まれで、今は京都産業大学教授ですが、東大卒業後に外務省に入省し、条約局長などをつとめ、2002年に退官しています。
本書は、尖閣問題、竹島問題、北方領土の領土問題、それに中国・韓国・台湾との歴史認識問題、そしてこれからの国家ビジョンを元外交官の体験に基づき提言しています。
「自国を自分で守る責任ある安全保障政策によって、徐々に日米同盟からの自立をめざさなければならない」、「何よりも必要なことは、日本自身が、他者の痛みを感じ、他者の苦しみを理解する謙虚さのうえに立つこと」の言葉には著者の切実な思いを感じます。
そして「戦後の日本人が造ってきたいくつかの価値」に、「日本が実施してきた平和主義があり、これを、自らの責任を果たす積極的平和主義に発展」させること、「日本自身が学びつつある、個人の人権と民族の精神文化を大切にする民主主義」があり、これらを「人類の普遍性に達する」原理として提起しています。
憲法よりも日米安保を上位に置いている日本外交を担ってきたからなのかどうなのか、直ちには同意できない記述も少なくありませんが、現実の日本外交を垣間見ることもできます。
ちなみに著者は、昨年9月20日に共産党が発表した「外交交渉による尖閣諸島問題の解決を」の提言後、「週刊しんぶん京都民報」のインタビューに答え、「この問題では、日本共産党の考えと同じ立場であり、私は『提言』にまったく異論はありません」と話していました(2012年11月4日付)。