『「原子力ムラ」を超えて』(飯田哲也・佐藤栄佐久・河野太郎著、NHKブックス)を読みました。
著者の一人、飯田さんによれば、この本の構想は10年前から担当編集者と議論していたそうです。
飯田さんは、京大工学部原子力工学科・同大学院・東大先端研博士課程を経て、原子力産業の一端である神戸製鋼所、そこから電力中央研究所に出向派遣で、学生時代を含めれば、10年にわたって原子力のアカデミズムと産業界の現場と電力会社の裏舞台と国の裏舞台を経験した人です。
生まれた年が私と同じなので、同時期に私は同じキャンパス内をウロウロしていました。そんなことはともかく、閉鎖的で、ほぼ全員が顔見知りの狭い世間でしかない「原子力ムラ」の生態・実態がよくわかると思います。
このムラは、「科学技術庁(現・文部科学省)・動燃」の官に閉じたムラと、「通産(経産)省・電力会社」の半官半民のムラの2つで構成され、経産省のなかには、市場原理主義を信望する東大法学部出身者を中心とするスーパーキャリア系グループ、東大電気工学科・現職工学科、京大電子・電気工学科や原子核工学科などを出た技術家キャリアグループの2つのグループがあるようです。
2009年の政権交代後、民主党が原子力輸出や原発14基新増設へ暴走する経過では、電力総連や電機連合を基盤とする民主党のエネルギー族という「岩盤」がむき出しになり、そこに自制を脱ぎ捨てた経産省の原子力官僚が悪のりしたさまも。
大手マスコミも、こうしたムラ=原発利益共同体の一員である(だった?)ことは間違いない事実で、私たちはこうした実情を知る機会がありませんでした。
ともかく、「将来世代に対して、後悔も言い訳もない活動をしていくほかない」(飯田さん)覚悟が私には必要だと受け止めました。