『国が地域医療を滅ぼす日』(大野健次著、ワニブックス)を読みました。副題が「迫りくるデュオ・ピークスの脅威」。
「デュオ(ラテン語で「2」)・ピークス」とは、団塊の世代が75歳以上となって高齢者のピークを迎える2025年、その15年後に死亡者数がピークに達する2040年の2つのピーク。9年後と24年後の話です。
著者が院長を務める金沢の城北病院は、「無差別平等の医療」を掲げ、差額ベッド代をとらず、もっとも弱い人の立場に立った医療を実践する、民医連(全日本民主医療機関連合会)加盟で、314ベッドの中規模病院です。城北病院で思い出すのは、09年に同じワニブックスから出版された『笑って死ねる病院』。テレビ金沢制作で、日本テレビ「NNNドキュメント’08」で08年6月に全国放映された番組の書籍化でした。
それはともかく、本書でいう「デュオ・ピークスの脅威」とは、現象そのものではなく、政府の政策こそが脅威を招くとする現実を解き明かします。たとえば病床(ベッド)数削減政策。診療報酬改定によってベッド数は減ってきているにもかかわらず、政府は、地域包括ケアシステムとセットさせ、医療費削減の目的でベッド数をさらに削減しようとしています。
しかし、「この地域包括ケアシステムを成功させるためのキーワードは中小病院の機能をしっかり残し日本の伝統ともいえる地域医療を崩壊させないこと」と強調します。