『戦国のゲルニカ 「大坂夏の陣図屏風」読み解き』(渡辺武著、新日本出版社)を読みました。
「ゲルニカ」は、スペインの画家パブロ・ピカソが描いた、ナチスによるスペイン・ゲルニカ村へ無差別空爆に対する告発の反戦画です。
1992年から2000年まで大阪城天守閣館長を務めた著者は、侵略戦争に対する怒りと悲しみを告発する絵画としての説得力において「大坂夏の陣図屏風」も決してこれに劣るものではなく、この屏風はまさに「戦国のゲルニカ」とよふべき作品、と断じます。
昨年(2015年)は、大坂落城と豊臣家の滅亡をもたらした「大坂夏の陣」400周年でした(前年の2014年は「冬の陣」400周年)。
この夏の陣について、NHKは2008年6月25日に「その時歴史は動いた」の一篇「戦国のゲルニカ」を放送し、近現代の戦争と平和の問題にも通じる視点を提示して話題を呼んだそうです。
その番組の主役ともいうべきものが「重要文化財 大坂夏の陣図屏風」で、著者もこの番組にかかわり出演もしたそうです。
「将兵の動員・出陣から戦闘員の殺し合いと功名争いの実態、非戦闘員への殺傷・略奪、婦女暴行、人さらい、非戦闘員の戦災避難、家族の死傷、家屋家財喪失の一端」…、「もうこれ以上の戦乱には耐えられない、戦争のない平和で安定した世の中で暮らしたい、と、夏の陣の悲惨な体験から痛切に学んだ結果」が、長い戦乱の時代に打たれた終止符だったのではないか。
少なくとも戦争だけは回避し続けた江戸時代人の平和の時代は250年、第二次世界大戦後のわが国の平和の時代はまだ70年…
ひとにぎりの愚かな好戦勢力とたたかいつづけ、この反戦平和を守り育ててゆくところにこそ、私たちの希望がある、と著者。