「日本国憲法」ってなんだったっけ? 09年版・№6      

20世紀初頭ぐらいまでは、戦争は自由で、そのためのルールづくりが戦時国際法として発達していました。
 ところが、第一次世界大戦後、国際連盟が設けられ、戦争の自由は否定されました。1928年には不戦条約が結ばれ、建前上は、戦争はもう許されない、という国際的合意までこぎつけました。

 にもかかわらず、世界は第二次世界大戦という悪夢を経験しました。二度と戦争を繰り返すまい、という世界民衆の願いは、「紛争の平和的解決」を基本的精神とした国連憲章を生み出しました。

 国連憲章はついに、武力による威嚇と武力行使を禁止するところまでたどりついたのです。この憲章が50か国の代表によって署名された1945年6月26日、戦争はまだ終わっていませんでした。このことが、武力による威嚇と武力行使の根源である武力の保持を国際法上の違法とはしなかった背景にあるのでしょうか。

 憲章署名後の8月6日・9日には、広島・長崎への原爆投下。日本国民にとって、憲法前文の「惨禍」は、原爆惨禍抜きには語れません。

 そして日本国憲法が公布されたのは、1946年11月3日。「核時代」を見越し、徹底して不戦を誓った日本国憲法が生まれました。国連集団安全保障体制にもっとも忠実な、そして純粋な憲法となりえた世界的・歴史的意義はかなり大きいのではないでしょうか。

「日本国憲法」ってなんだったっけ? 09年版・№5      

 日本国憲法第9条。「①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」
 前文で、国民の「平和のうちに生存する権利」を保障したのと一体のものとして、政府に対し、戦争をすること、戦力をもつことを断じて禁じた世界的に有名な条文です。

 国連憲章でも、「加盟国は…武力による威嚇又は武力の行使は…慎まなければならない」(第2条第4項)と言っており、その点では9条1項と同じです。違いは、国連憲章が「慎まなければならない」と慎重な表現ですが、わが憲法は「永久にこれを放棄する」と強烈です。どちらにせよ、趣旨は「原則禁止」です。

 日本は、国連憲章の精神と条文に忠実で、国連中心主義や国際貢献を憲法にもっとも体現している誇らしい国です。

 しかも、武力による威嚇や武力行使の根源にある武力そのもの(戦力)を憲法9条2項で禁止した日本では、国連が原則禁止した武力による威嚇も武力行使も絶対にありえません。

 この条文をもつにいたった背景や意味なども考えてみる必要がありそうです。

「日本国憲法」ってなんだったっけ? 09年版・№4      

日本国憲法第99条は、こう言っています。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」。

   
 憲法は「国の最高法規」(98条)ですから、公職にある者が憲法を尊重・擁護する義務を負うのはあたりまえのことです。99条がそのことだけを言っているのであれば、たいした条文ではありません。

 大事なのは、この条文で、「国民」という言葉を意図的にはずしてあることです。つまり、国民は、憲法を尊重・擁護する「義務」を負わないのです。そのかわりに、国民は、政府や議会、一人ひとりの公務員に対して、「憲法を擁護し、尊重せよ」と要求する「権利」をもつ、ということです。

 「憲法は、国家を縛るルール」という考え方を自覚的に示しているのがこの条文で、「立憲主義憲法の真髄」と言われています。

  「海外における武力行使を可能にする」憲法に変える、とすることでほぼ一致している歴代民主党代表には、「国家を縛るルールが憲法」という考え方を土台に憲法を議論する姿勢をもっていただく必要があると思います。

「日本国憲法」ってなんだったっけ? 09年版・№3      

鳩山由紀夫首相(現民主党代表)は、2005年2月に『新憲法試案』(PHP研究所)を出版しました。
 そのなかで鳩山氏は、民主党が03年10月総選挙マニフェストで打ち出した「創憲」について、「『創憲』は新しい憲法を創ることを意味するから、実は『改憲』よりも『改憲』的なのである」と言い切っています。

 「それまでの民主党は『護憲』派にも気を遣い…『論憲』との立場をとっていたが、それでは何を言っているのかわからない」。要するに、民主党は改憲政党です、と宣言しているわけです。
 そのうえで、戦力不保持と交戦権を否認した九条二項は「現行憲法の最も欺瞞的な部分」なのでこれをなくし、「自衛軍を保持する」とし、「明治二十二年憲法によって創始された議会主義と政党政治」を受け継ぐ憲法だから「天皇を元首とする」とまで明記します。

 民主党歴代代表の憲法問題での考え方をひろってみました。民主党が05年秋にまとめた「憲法提言」もこれらの考え方にそっていることは言うまでもありません。
 いったい憲法について、民主党が言うように、「足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改める」と、言葉だけ聞かされれば否定しようがない一般論で変えられるものでしょうか?

「日本国憲法」ってなんだったっけ? 09年版・№2      

今回の総選挙では、改憲が争点となったわけではありませんが、民主党はマニフェストに、改憲について「慎重かつ積極的に検討」と書き入れました。
 民主党の憲法問題での考え方を、歴代代表の言葉をひろって跡づけておきます。

 菅直人氏(現副総理)は03年12月、小沢一郎党首の自由党が民主党の党役員・政策を継承することを合意して合併(03年9月)したあとの党大会で、「日本の国のあるべき姿を示す新たな憲法をつくる『創憲』を主導する」と強調しました。

 04年5月に代表になった岡田克也氏(現外相)は、同年7月に訪米し、「憲法を改正し国連安保理決議のもとに、日本の海外における武力行使を可能にする」と表明しました。

 05年9月に代表になった前原誠司氏(現国交相)は、就任記者会見で「九条一項はいいが、二項は削除し自衛権を明記することだ」と発言。

 06年4月に代表になった小沢一郎氏(現民主党幹事長)は、もともと自民党幹事長時代の1990年代に改憲論を主導した人。99年には「文藝春秋」9月特別号に寄稿し、「占領下に制定された憲法は無効であると宣言し、もう一度、大日本帝国憲法に戻って、それから新しい憲法を制定すべきだった」と書きました。そして自衛戦力の保持に加え、「兵力の提供をふくむあらゆる手段を通じ、世界平和のため積極的に貢献」の規定を九条に追加し、海外での武力行使に道を開く方向を明確にしていました。

「日本国憲法」ってなんだったっけ? 09年版・№1      

 2年前(2007年)の7月、「今の憲法は占領時代に、連合国軍総司令部が日本に押し付けた」と主張する当時の安倍晋三首相が、「改憲」を前面に掲げて参院選に臨み、自民党は大敗、参議院は「与野党逆転」しました。
 今年(2009年)8月、国民は自民・公明政権ノーの審判を下し、それまで野党第一党だった民主党がその受け皿とみなされ、ついに政権交代が実現しました。自民党を退場させたこと自体、日本の政治にとっては画期的な前進です。
 憲法が全面開花する政治が望まれます。民主党中心の政権が国民のこうした願いを実現してくれるでしょうか?

   今回の総選挙の民主党マニフェストを見ると、「現行憲法に足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改める」、「2005年秋にまとめた『憲法提言』をもとに…慎重かつ積極的に検討していきます」とあります。これって、改憲するってこと? 
あらためて日本国憲法ついて、これからぜひいっしょに学びたいと思います。