05,10 |
05,10,19 |
『学校で教えない性教育の本』
(河野美香著、ちくまプリマー新書) |
著者は現役の産婦人科医。全国の学校からの要望を受け、中高校生への性教育の講演活動を精力的に行なっているかたらしい。
この本は、そういった機会に出された質問や、プライベートに受けた相談へのアドバイスをまとめたもので、読者対象は中高校生(ティーンエイジャー)。
著者が所長をしているクリニックでも、年間70〜80人の10代の性感染症患者を診ているほど、「10代の性に関しては、今、残念ながら大変な事態になっている」。「この状況は、わたしを含めた、世の中の多くの大人たちが悪いのであって、みんなはその犠牲になっているのだと思う」と著者は言う。
人間として、おそらく母としての著者の愛情がたっぷり感じられる。「いろいろな病気やからだのことをもっともっと知って欲しい、自分のからだを大切にして欲しい」との願いがこめられたアドバイス。
私も二人のティーンエイジャーの親。「たくさんの正しい情報を知り、そして間違いの無い知識を習得しなければならない」。 |
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05,10,16 |
『漢字・漢語・漢詩』
(加藤周一+一海知義、かもがわ出版) |
加藤さんは、2000年に雑誌「世界」(岩波書店)で一海(いっかい)さんと「漢字文化圏の未来」をテーマに対談したときに、国の文化的根幹を守り、国際語(英語)の進出とバランスするためにも、中国と韓国と日本の東北アジアにおいては、半分国際的な言葉である筆談可能な言語(漢字文化)を復活させたほうがよい、と提案していた。
そのときの議論を引き継ぎながら、「論理性と永続性とでもいうべきものが漢字の大きな特徴」(一海)であり、中国語は「将来に向かって数学的思考がだんだん支配的になっていく未来の文化のなかで、いちばん論理的で便利な言語」(加藤)と語らっている。
ともかく、「漢字の将来性、日中の漢字文化の違い、論語の意味など談論風発(だんろんふうはつ)、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の3時間半」(オビ)をかなりコンパクトにまとめている。 |
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05,10,14 |
『宇宙・地球・生命 科学最前線を読む』
(前田利夫著、新日本出版社) |
著者は大学院理学研究課で学び、「しんぶん赤旗」の科学部記者20年超の大ベテラン科学記者。
ヒトの全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読、脳の活動水準を維持・向上できること、137億歳とされる宇宙生成の謎の解明、太陽系外惑星の発見や地球外生命発見の可能性、雪玉地球(スノーボール・アース)仮説が生物進化と関係しているかも、などなど、科学の最前線の進展の様子を簡潔に伝えてくれる。 |
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05,10,14 |
パンフレット『いま、まともに見直すとき 「満身創痍」の原子力政策』
(原発問題住民運動全国センター) |
原発の多くが「設計寿命三十年」を終えようとしているときに、国と電力会社はこれを「六十年」に延長し、「高経年化対策」という名の「老朽原発酷使」路線を強行しようとしています。
過剰プルトニウム事態の解消策でしかない「プルサーマル」、冷却材喪失事故(スリーマイル島原発)や反応度事故(チェルノブイリ原発)など苛酷事故の危険、耐震設計審査指針の基礎がこの間の地震で崩壊している事実、原発運転継続の場当たり的対応でしかない使用済み燃料中間貯蔵計画、「札束」攻勢を強める高レベル放射性廃棄物処分場問題など、日本の原発政策はあらゆる面で行き詰まり。
原子力政策の根本的見直し、独立した安全規制機関の確立、国民的議論に基づく政策決定の三つの方向での転換を訴えています。
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05,10,10 |
『ホーキング、宇宙のすべてを語る』
(スティーヴン=ホーキング・レナード=ムロディナウ著、佐藤勝彦訳、ランダムハウス講談社) |
2日前に市内の本屋で買い、読み始めたらとまらなくなった。
筋萎縮性側索硬化症とたたかいながら、精力的に研究を続ける「車椅子に乗った天才」・ホーキング氏に、今回はサイエンスライターのムロディナウ氏が執筆者として加わっている。
「今回は」と断ったのは、世界で750人に1人が読み、ロンドンのサンデー・タイムズ紙で237週間にわたってベストセラー入りした『ホーキング、宇宙を語る』は、1988年にホーキング氏一人の執筆(邦訳は89年、早川書房)。
「すべてを語る」で面白いのは、哲学者への率直な不信感が語られていること。「疑問を投げかけることが仕事である人々、つまり哲学者は、科学理論の進歩についていくことができていません」「科学は哲学者にとって…あまりにも技術的で数学的になり…彼らの探求範囲を減らしてしまい…アリストテレスからカントまでの哲学の偉大な伝統からの、なんという落ちぶれぶりでしょう!」。
ともかく、宇宙論の彼の研究分野にとどまらず、この物質世界をどう理解するかといった観点も含め、宇宙の観測や理論がどこまできているか、ということを、一般の人たちに簡明に伝えてくれる本。 |
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05,10,09 |
『9条と日中韓』
(加藤周一著、かもがわブックレット) |
今年6月、京都・西陣織会館での講演の記録。同様のテーマを書いた5月23日付「朝日新聞」夕刊の「夕陽妄語」、加藤氏が訪中した際に記事になった「中国青年報」4月6日付も付録として掲載。
「日本の国際問題の集中的表現が九条」の話を導入に、「国際問題でない戦争というものはない」わけだから、「戦争による、戦争のための神社」である靖国神社問題も当然国際問題だと指摘、「事実の問題として十五年戦争には二つの解釈があって、靖国的解釈はひとり日本だけ」と明言。
十五年戦争の見方に関する限り、中国の見方は国際的であり、韓国もロシアもアメリカも根本的に同じ考えだから、日本は1930年代初めに「名誉ある孤立」だといって、国際連盟を脱退した状況と似ている、と喝破。
「過去の十五年戦争の現在の日本社会による正当化または美化…はいまや常識とされている歴史観の裏返しであ(り)…中国のみならず日本自身を含めてのアジアの未来を脅かす」の言葉を深くかみしめないといけない。 |
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05,10,08 |
『若者が《社会的弱者》に転落する』
(宮本みち子著、洋泉社新書) |
奥付をみると、02年11月発行で03年9月に四刷になっている。
欧米先進国では、すでに1980年代、若者のなかでの失業問題、ホームレスの発生、貧困化と犯罪増加、未婚の母問題、同棲の一般化などが社会現象となり、研究や社会的な検討が進んだらしい。
この日本でも若者のなかに同様な事態が見られるが、「いつまでも親に寄生して自立しない若者」とか「大人になりたがらない若者」とかと、若者を一面的にとらえる傾向が強くはないか。
著者は、「時代の転換期にあって、若い世代が層としてリスクをかかえ、社会的弱者に転落しかねない状態にあることを認識」すべきであって、「包括的な青年政策を日本で確立すること」がいま必要だ、と強調する。 |
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