05,09 |
05,09,18 |
『自治体民間化』
(晴山一穂・自治体問題研究所編、自治体研究社) |
軍事大国化という「強い国家」をつくりながら、一方で「小さな政府」をさけび、公務員の総人件費削減だとか、指定管理者制度、独立行政法人、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)と、「官から民へ」をあらゆる手段で進めようとする財界主導の日本社会再編の動きはまさに巨大。
他国に例を見ない巨大公共事業への依存体質、開発優先型経済政策の温存を見れば、そのねらいは直ちに底が割れるが、その現実を見誤らせることにねらいもありそう。
憲法がいう「全体の奉仕者」として、国民の福利の実現のために奉仕する公務員像、国民主権に基づく公務員の理念上の地位を、福祉・教育など生存権・社会権の視点から、しっかりと見直すべきではないか。
市場原理と自由競争、民間企業の利潤追求活動とは原理的に相容れない公務がきわめて危機的状況に置かれている、と私も思う。 |
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05,09,17 |
『介護保険見直しの要点と対応のしかた』
(朝日健二・矢部広明著、桐書房) |
介護保険の創設を振り返ると、1994年9月、社会保障制度審議会のもとに設置された社会保障将来像委員会が「第二次報告」で、社会保険方式による介護保険構想を初めて公式に表明、12月には、厚生省に設置されていた高齢者介護対策本部の高齢者介護・自立支援システム研究会が報告を発表し、介護保険制度創設の必要性を訴えた(『介護保険』伊藤周平著、青木書店、97年5月刊、参照)。
その報告では、「多くの国民は、将来介護が必要になった時にどのような形で生活を続けられるか、確固たる見通しが立てられない状況」であり、介護保険制度が実施されれば「社会保険システムにより、高齢者は社会全体で支えられることになる」ので、「現役世代も自らの老親の介護に対する不安が軽減され安定的な日常生活を営むことが可能となる」とされていた。
2000年4月の制度実施を前に、いわき市でも啓発用パンフレットを作成し、出前講座を積極的に展開したが、そのパンフレット(99年8月)には、介護保険が始まると、「いろいろなサービスの中から、いつ・どこで・どんなサービスを利用するかを、利用する本人が選べるようになります」と説明がある。
今年の6月には自民・公明・民主の賛成で介護保険見直し法が可決された。いわき市内の介護保険施設をたずねると、「お金がないものは利用するな、と言うに等しく、あまりにひどい」という声がほとんど。
その「見直し」の内容と、「新予防給付」への対応、地域づくりの視点での改革提言をまとめている。 |
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05,09,15 |
『吉田松陰と現代』(加藤周一著、かもがわブックレット) |
松陰については歴史上の人物として名前を知っているに過ぎないが、加藤周一さんの講演の記録を聴かないわけにはいかない、という思いで読んだ。
加藤さんは「九条の会」アピール文の原案を書いた人。そしてこの講演を聴いても、きわめて現実主義者であることがよくわかる。
彼の、言葉をとおした表現に対する信条は、「単純でなければならない」ということで、小泉純一郎に通じるところもあるが、松陰の考えは「開国」と「攘夷」、そして現代に対応するのが「グローバリゼーション」と「独立の精神」。
30歳で幕府に処刑された松陰の「松下村塾」(1855年〜58年)の学生には、伊藤博文、木戸孝允、高杉晋作がいた。
私は加藤さんぐらいの情熱をもって、言葉をとおして自分の考えを、人の前でちゃんと表現するすべを、多くの人が会得することが世の中を変えるポイントではないか、といつも思う。
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05,09,14 |
『新しい地方自治制度の設計』
(加茂利男著、自治体研究社) |
「合併の泥沼から顔を持ち上げて、地方自治をめぐる環境変化を見渡しながら…『二一世紀の地方自治制度』をめぐる論議に踏み込んでみるようなものにしたい」との思いでこの本を書いた、と著者は言う。
フランスでは、三万を超える基礎的自治体(コミューン)があるが、これらを保持しつつ、合併ではないコミューン連合(コミュノテ)の道を模索している。
人と人、住民と政府の「近さ」(近接性)が地域民主主義と地方行政の効率や効果の根拠、という考えが根底にある。
もちろんフランス国内でも様々な議論があるようである。
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05,09,13 |
『検証「三位一体の改革』
(平岡和久・森裕之著、自治体研究社) |
「三位一体の改革」の本来の意味は、中央集権的な財政構造だった地方税、地方交付税、国庫補助負担金を、分権時代にふさわしく、自治体が自らの責任と裁量で地域にかなった事業やサービスを展開できる財政構造にするために、それぞれを連動させて改革すること。
ところが初年度の2004年度の「三位一体の改革」の名で行なわれた現実は、国庫補助負担金の削減に対し、約半分の財源措置(税源移譲ではなく)がされただけで、地方交付税はこれと無関係に大幅削減。
2005年度もこれは引き継がれ、国の財政再建のために移転財源を大きく純減させており、分権社会の創造とはほど遠い。
こうした事態に対する自治体関係者の怒りが、「三位一体の改革」の本来の意味をベースに、「たたかう地方六団体」を生み出した。
六団体の主張に全面的に同意できるわけではないが、ともかく、政府に対する政策転換を迫らないといけない。
「三位一体の改革」というひとつの同じ表現の意味が、国がいうときと自治体がいうときとで違うのはぐあいが悪い。 |
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05,09,12 |
『岩城音楽教室』(岩城広之著、知恵の森文庫) |
1977年に出版した本の文庫化。自分の音楽体験に基づいたかなり大胆な音楽教育の提言といってよい。
「解説」でエッセイストの関容子さんは、この本の「本質は驚くべき正直さで語られた世界的大指揮者への成功譚」と言っている。
ご本人は、「日本の音楽教育と、熱心なママゴンの努力で、膨大な日本の子どもたちの中から、特にすぐれた少数の本物が生まれてきたのも事実」としながら、「戸外で子どもたちを元気に遊ばせて丈夫な子どもを育て、自然に音楽を好きになるように仕向けたうえで、音楽をやらせたらどうか」、「ワクをはずして、もっと楽しもう」と提案している。
30年前、ママゴンたちがこの本のタイトルから内容を誤解し、読んでからそれとは反対のことをそそのかされ、「とんでもないことが書かれている本だ」と口コミで伝わって売れたのではないか、と本人は推測している。
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